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信州・取材前線:水源条例で素案、保全へ佐久市(その1) 森林買収脅威、個人資産も規制 /長野

 外国資本などによる水資源の獲得を目的とした森林買収を未然に防ぐ佐久市の「地下水等水資源保全条例」(仮称)の素案が出来上がった。水道水源の大半を八ケ岳、浅間山、蓼科山からの地下水と湧(ゆう)水に依存する佐久地域にとって、水源となる森林買収は大きな脅威。条例素案では、地下水など水資源は地域共有の財産である『公水』と位置づけ、個人資産の地下水にも一定程度の強い規制をかけ、過剰な汲み上げを防ぎ、豊かな水資源を確実に将来へ継承できる条例を目指す。佐久市と周辺12市町村長は今月、県と国に対し、地下水の利用規制、保全の条例の制定、法整備を要望した。【藤澤正和】

 10年佐久市12月市議会で「外国資本の森林買収の目的は、開発や木材ではなく『水』とも考えられる。佐久での買収事例はあるのか」との質問が出された。そのころ同市には飲料水企業など2件の大規模な山林買収の問い合わせがあった。柳田清二市長は「今世紀の最も深刻な問題は水不足。国際紛争も起こっている。ペットボトルの水は、ガソリンより高価な『ブルーゴールド』と呼ばれ巨大市場になっている。貴重な水資源が外に持ち出されることは市民生活に脅威をもたらす」と、早急な対応を約束した。

 このため、11年6月、市地下水等水資源保全研究検討委員会(委員長、中屋真司信州大工学部教授)を設置。

 佐久地域では、地下水のくみ上げによる地盤沈下や水不足問題は特に表面化していない。しかし、検討委は、水道水源のほとんどを地下水と湧水に頼る地域の特性から、地下水をどう管理するかに焦点を当てた。

 民法上、地下水は土地所有者の財産だが、同時に地域住民の共通の財産であり、「地下水は公水」との概念を掲げ、公有地以外でも自治体に地下水の保全、管理の責務が発生するとした。

 検討委は11年12月14日、6カ月間の検討結果を提言にまとめた。提言は、井戸の掘削や取水量を定めている既存の市自然環境保全条例の改定でなく、水資源に特化した新たな条例素案を示し、制定を求めた。

 佐久市内の水道の水源は、佐久穂町が供給量の70%を占めるなど周辺市町村にある。検討委の提言を受け、広域で取り組む必要から11年6月、小諸市など周辺12市町村で「地下水等水資源保全連絡調整会議」も設置。並行して本格的な取り組みを開始した。

 佐久市周辺の12市町村長は11年12月26日、地下水や湧水等の水資源が地域共有の財産として公水であると認識し、市町村全体で保全に努める▽市町村間で外国資本等による森林買収の情報を共有▽地下水や湧水等の保全を目的とした法律または県条例の早期制定を要望する--などとする共同声明に調印した。

 柳田市長は「水源地の買収は、全国どこでも起こりうるもの。法令整備は重要になる。国土を守るという意味で、共同声明は先兵と位置づけられる」と共同声明の意義を強調した。

 一方、佐々木定男・佐久穂町長は「『水源の町』として森林買収があった場合の対応に苦しむ。共同声明は買収のけん制になると思う。小さな町にとって非常にありがたい。各町村の条例制定もやりやすくなった」と評価している。

毎日新聞 2012年2月4日 地方版

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