(CNN) 牛の幹細胞を培養して食肉をつくる技術の研究に、オランダの科学者が取り組んでいる。成果として、今秋にはその肉を使った「幹細胞バーガー」の試食にこぎ着けたい考えだ。
マーストリヒト大学で血管生理学を研究するマルク・ポスト教授が19日、カナダ・バンクーバーで開かれた米科学振興協会(AAAS)の年次大会で発表した。
2007年の米科学アカデミー紀要によると、地球上で凍結していない土地のうち、耕作地と牧草地の占める割合は約35%。ポスト教授は「世界の肉の消費量は今後約40年間で倍増する。土地不足を解決するための発想が必要だ」と述べた。
ポスト教授は幹細胞バーガーの開発に向け、非公開の資金提供者から25万ユーロ(約2600万円)の援助を受けているという。完成したバーガーをだれが試食するかについては、この人物が決定権を持っているという。
ただ、現在までに作製したサンプルは、長さ約3センチ、重さ約0.5グラムの小さな肉片。色もピンクがかった黄色で、真っ赤な肉の色とは明らかに違う。本物に近付けるためにカフェインを加え、筋肉中の色素「ミオグロビン」を増やす方法が検討されているという。また肉の組織とは別に、ジューシーな味わいを出すための脂肪組織も培養する必要がある。
研究材料としては現在、食肉処理場の廃棄物を利用しているが、同教授によると将来は牛1頭を丸ごと使って幹細胞を採取することもあり得る。幹細胞から肉をつくる技術を使えば、1頭の牛からできるバーガーの数は100万倍ほどになると、同教授は説明する。
ただし、研究には膨大な費用と手間がかかる。通常のバーガーより効率的に幹細胞バーガーをつくれるようになるまでにはどのくらいかかるか、との問いに、同教授は今の環境では不可能だと答えた。研究資金が無限にあると仮定しても、10~20年先のことになるという。