東京電力福島第1原発から北に30~50キロの福島県相馬市は22日、外部被ばく線量が年間2ミリシーベルト以上の子供を対象に、住居などの除染作業を優先的に実施する方針を決めた。医療相談にも応じる。個別の外部被ばく量に基づいて基準を策定して除染する取り組みは極めて珍しく、立谷秀清市長は「子供がどの程度被ばくしているかを検出し、適切に対応することが必要。実測値に基づいて優先順位を付けながら、実効性ある除染作業を進めていきたい」と話す。
相馬市は乳幼児から中学生までの子供や妊婦の計4010人を対象に外部被ばく調査を実施。ガンマ線などを測る装置を昨年10月から3カ月間つけてもらい、被ばく量を年間線量に換算して分析した。その結果、積算線量の最高は年間4.3ミリシーベルトだった。国の被ばく許容限度の年間1ミリシーベルト以上は522人(13%)で、2ミリシーベルト以上は33人(0.8%)いた。空間線量が毎時1マイクロシーベルトの山間部の学校では児童の半数、生徒の約7割が2ミリシーベルト以上と高かったほか、空間線量が毎時0.2~0.4マイクロシーベルトと山間部より低い平野部でも2ミリシーベルト以上の生徒が複数いるなど、地域や個人によってばらつきもみられた。
同市は調査結果を受け、文部科学省の「学校での被ばくは当面年間1ミリシーベルト以下」との方針を参考に、全生活では倍の2ミリシーベルトを除染などの目安にした。
調査協力した東京大医科学研究所の坪倉正治医師は「地域の空間線量よりは、市民の個別の被ばくデータを評価することが重要。除染活動などを通じて線量がきちんと低下しているか確認する上でも継続調査が必要だ」と話す。【河内敏康】
毎日新聞 2012年2月23日 1時15分(最終更新 2月23日 1時21分)