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中国:武漢で日本人の自転車盗難 ネットで5万人が捜索協力、奇跡…手元に戻った

 【上海・隅俊之】自転車でボランティア活動をしながら世界一周の旅を続ける日本人男性が、中国湖北省武漢市で自転車を盗まれた。ところが、約5万人の市民がインターネットで「自転車を捜せ」と呼びかけ、3日後にそのままの状態で見つかった。中国では一度盗まれたものが持ち主に戻るのは奇跡に近く、男性は「武漢の人々やメディアに感謝したい」と話している。

 男性は長野県出身の看護師、河原啓一郎さん(27)。昨年10月に日本を出発。中国から中央アジア、アフリカなどを数年かけて回る途中だった。3日に武漢に到着し、献血を呼びかけるボランティアをしていた。

 自転車は20万円以上。17日午後、武漢市内の駐輪場近くに止めていたが、同日夜に戻ると盗まれていたという。警察に届け出たところ、地元テレビが報道。中国版ツイッター「微博」で「世界旅行中の人の自転車が中国でなくなるとは。中国人のメンツにかかわる」などと書き込みが相次ぎ、反響が広がった。

 河原さんは会員制交流サイト「フェイスブック」で「武漢中が僕のために、僕の自転車のために動いてくれている」と感激を表現。自転車は盗品市場に売りさばかれており、約1000元(約1万2000円)で買った市民が、微博を見て河原さんのものと気づき、20日に届け出た。

 広州紙、羊城晩報は「人々の意識の中には、外国人はいつも文明的に進んでいて、中国人はかなり立ち遅れているという感覚がある」と指摘。市民の間で動きが広がった背景には、国際化が進む中で自国の倫理観の低下を恥じる中国人の心境があるようだ。

毎日新聞 2012年2月22日 東京朝刊

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