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海底トンネル事故:天井部強度不足か ブロック薄いと指摘

事故当日の7日に天井部に設置されたブロックの位置。ここから大量の海水が流入したとみられる
事故当日の7日に天井部に設置されたブロックの位置。ここから大量の海水が流入したとみられる

 岡山県倉敷市の海底トンネル事故で、工事会社の鹿島は21日、半分に割れた状態の壁面ブロック(セグメント)片が縦穴から見つかったことを明らかにした。事故当日の7日に天井部に設置されたブロックの可能性が高く、ここから大量の海水が流入したとみられる。ブロックの厚さは通常より薄かったとの指摘があり、ノーズダウン現象と呼ばれる掘削機の傾きなど何らかの理由で生じた想定外の圧力に耐えられず、割れた可能性が出ている。

 長さ約3.5メートルのブロックが半分程度に割れた状態で引き揚げられた。ブロックには接続部のボルトが曲がった状態で残っており、既に組み上げられたブロックとみられる。

 ブロックの標準的な厚さは、トンネルの直径に対して4~5%とされる。今回の工事に当てはめると、直径4.8メートルに対し4%だと厚さ19.2センチだが、実際の厚さは16センチだった。長岡技術科学大の杉本光隆教授(トンネル工学)は「今回の壁面ブロックは標準より薄い。薄いブロックが外からの圧力に耐えられなくなって破損したのではないか」と指摘する。

 さらに7日に組み上げた壁面ブロックには、トンネル内壁に固定するセメントが未注入で、不安定な状態だった。鹿島によると、掘削機は長さ約6.8メートルの円筒形で、油圧ジャッキ26本を伸縮させながら掘り進む。同日は幅1.4メートルの壁面ブロック3個分を掘り進んだ。このうち1・5個分にはセメントが未注入で、6.5センチの隙間(すきま)が残った。掘削機内にはブロック1.5個分があり、最後の3ブロック目の組み上げ中に事故が発生したとみられる。

 こうしたことから、何らかの理由で圧力が生じ、天井の接合部に設置されたブロックが割れたとみられる。水島海上保安部などの調査データでも、海底の巨大なくぼみの中心は、接合部とほぼ一致している。

 鹿島は「破損した壁面ブロックは、組み立て中か既に組み上がったブロックの可能性がある。原因究明の重要な証拠になるので捜査当局に提出した」と説明している。【井上元宏、五十嵐朋子】

毎日新聞 2012年2月21日 21時42分(最終更新 2月22日 0時00分)

 

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