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木造校舎実現へ大規模な火災実験

2月22日 16時44分

木造校舎実現へ大規模な火災実験
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防火上の問題などから建築が規制されている木造3階建ての学校について、設計などを工夫することで建築できるようにしようという研究が進められ、22日、実物大の3階建ての学校を燃やす大規模な火災実験が行われました。

この実験は、国の研究機関や大学、それに住宅メーカーの研究グループが行ったもので、茨城県つくば市の研究機関の敷地には、幅50メートル、奥行き16メートル、高さ15メートルの3階建ての学校に見立てた木造の建物を3億円かけて作りました。
木造の学校は、防火上の問題などから2階建てまでしか認められていませんが、校舎を木造にしたいという学校が増えていることなどから、国土交通省では安全を確保できれば建築を認める方針を示しています。
実験に使われた校舎は、柱やはりを通常よりも太くしたり、接合部分の金具を、炎にあぶられないよう表面に出ない工夫をしていて、火事が起きても1時間は倒壊せずに避難時間を確保できるかどうかが確かめられました。
実験は、1階の職員室に火をつけて火災から10分余りたった想定で始まり、火が大きくなって窓ガラスが割れ炎が吹き出すと10分ほどで3階まで燃え広がりました。1時間後には建物全体が燃えましたが、柱やはりは残り、建物が崩れ落ちないことが確認されました。その後、1時間15分後に中央部分の骨組みが崩れ落ち、2時間後には建物全体が倒壊しました。実験の責任者で早稲田大学創造理工学部の長谷見雄二教授は、「1時間はもったので耐火性能があることは確認できた。ただ、窓から噴出する炎の量が予想以上に多く、上の階に早い段階で燃え移ったことなど課題も見つかったので、今後さらに対策を進めたい」と話していました。
研究グループは、実験で得られたデータなどを基に改良を加えて再び火災実験を行う予定で、国土交通省では、研究結果を踏まえて、再来年度にも木造3階建ての校舎を建築できるよう法律の見直しを進めることにしています。

木造校舎の現状は

文部科学省によりますと、全国におよそ40万棟ある公立の幼稚園から高校までの校舎のうち、木造の校舎は10パーセント余りにとどまっています。防火上などの問題で、木造の校舎は2階建てまでしか認められておらず、生徒の数が多く、敷地の狭い都市部の学校では、木造の校舎を建てるのが難しいのが現状です。
一方、平成22年度に新築または増改築された1271棟の校舎のうち、木の雰囲気を少しでも感じられるよう壁や床などの一部に木材を取り入れた校舎は62パーセントに上っています。学校関係者によりますと、校舎に木材を使うと、年間を通して快適に過ごせたり環境教育に生かせたりするほか、子どものストレスを緩和させて授業への集中力が増す効果もあるということです。文部科学省が市町村の教育委員会などに行ったアンケートでも、規制が緩和された場合、「校舎の木造化に関心がある」と答えた人は56パーセントに上り、木造校舎への関心が高まっています。