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リアルタイム雑記
2011年01月03日(Mon)
【キサト…ってゆーか、葛西数李短編:[侍]】
 
なぜ三日月が好きなのかと、ふ、と考える瞬間があります。

月には様々な顔がある。
そのどれを好きになっても良いのに。僕は三日月がいちばん好きだ。


剣閃が描く型に似ている


ああ 僕は


サムライだったのですよね。侍だった……


「おまえは掴めない子だね、数李(しゅり)。
さながら手のひらをすり抜けてゆく風のようだ」


兄はそう言って、優しく僕の髪を撫でてくれました。家を出。[葛西]の名を棄てる僕の頭をただ、撫でてくださった。

「私は少しだけ、おまえが羨ましいよ数李」

「羨ましい…?」

「葛西という家。これがどれほどの価値ある家かを、知っているか」

「知ってます。富を財産を。果てしなく築く家訓を掲げし、東北の長だ」

「……それだけではない」

兄は、僕の両肩を力強く掴み僕を見据え

「侍だよ。火焔不動神を奉る、侍の家なんだ数李」

「……………」

「そして、おまえには……剣への天武の才がある。いや、剣だけではない、頭脳も何もかもが――この私など遥かに超えた力をおまえは……」

僕は静かに人差し指を伸ばし、兄の言葉を制しました。

「だけど僕は。葛西という名前を棄てます」

「…………数李…」

「大丈夫。エンペラー。あなたが危地に陥ったなら、僕はどんな場所からも貴方を救うために駆けつけます」


もう竹刀も振らない日々では、闘う力などなくなっていようけれど



「剣道…ですか?…いちおうたしなんでいますが」

話しかけてきたのは舎弟でした。ユージ、という愛称の舎弟です。

「そうなんすか、剣道! あれ、カッコいいすよね総長!!」

[総長]とは、ただいま現在の僕の肩書きです。
東京のバイク集団の統括をしています。いい年をして道楽を、とは思いはしますが、風を斬り走る瞬間は堪らなく愛しい。

(…刀だ。……剣で斬る瞬間に似ているんです、走る瞬間は………)

物思いに浸ると、舎弟の彼が僕の傍らに温めた酒を置きます。

「あったまりますよ総長」

「ありがとうございます」

「ねえ、キサトさん」


[キサト]というのも。
愛称というやつです。
いちおう漢字で表記をすると[酒里]です。
これ、読み方を変えると『しゅり』って読めたりするんですよ。


「キサトさん、剣道やってんなら葛西善一郎ってやつ、知ってます?」

「え……」

「こないだ会ったんだ。旅行かなんかで東京まで来てたらしくて!
茶髪にタレ目で、真っ白なスーツ姿でさぁ、竹刀を抜いて凄んできたんだ」

「ど、どういうシチュエーションか知りませんが、彼と喧嘩をしたのですかユージ」

「いや、してねえっす……でも、スゲーなぁって思った。たったひとりで俺たち雷砲党に挑んでくるだなんて」

「……………」

“あれが本物のサムライってやつかぁ”と素直に感心しきる舎弟に。僕は微かに歯軋りをした。

(僕は。サムライを棄ててしまったのに……)

「………? キサトさん、どうしたんすか、顔色が悪いっすよ」

「………大丈夫です…」

「時間、ある時に教えてくれませんか? 剣道」

「えっ」

「いつまた逢えるかわからないけど……善一郎に今度会ったら。あいつの友達になりたくて」

「………ユージ…」

「友達になるんならさ、とりあえず剣道の基本は覚えておかなきゃって」


僕の脳裏に、天啓が轟く。


そうか。僕が遥か遠みの東京に来たのは。葛西の名を棄てたのは。

(だが僕は、刀を棄てたわけではなかったのだ)


刀は、武器は。この頭脳と張り巡らした人脈だ。

(王兄。善一郎くん……)


葛西の名は、日の本の旗を護るために存在する。

日本の旗を護るんだ。
四肢が砕け、刀身が砕けようとも衛るべきものの為に走る。侍。

(そのためには、…名前すら棄ててしまっていいのですよ)


僕は、やはり侍だ。

葛西という偉大な名すら棄ててでも、僕は僕の刀を磨き、来るべき敵へと立ち向かいたいのだ。



「酒、進まないすね」

いぶかしむ舎弟に僕は、酷笑みを返す。

「血筋ですかね。お酒には弱いんですよ」









 
















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マジに即興で書きました。挿し絵とかは後で付けて、文章も整理してどっかに転載しようかなー。


22:36:38
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