【ニューヨーク山科武司】米原子力規制委員会(NRC)は9日、東芝子会社の米ウェスティングハウス・エレクトリック(WH)の原子炉を採用した、南部ジョージア州のボーグル原子力発電所内の原子炉2基の建設・運転を認可した。米国で原子炉の新規建設認可は1978年以来。ただ、NRCのヤツコ委員長は建設に反対しており、トップが「異例の反対」(ロイター通信)を表明する中で、原発建設が再開されることになった。
NRCは米スリーマイル島原発事故(79年)後、新規建設を認めてこなかった。AP通信などによると、委員5人のうち4人の賛成多数で認可が決まった。
ヤツコ委員長は反対票を投じた。反対理由として、福島第1原発で起きた部分的な炉心溶融(メルトダウン)の防護対策強化を新型原子炉の事業者らに強制していない点を指摘した。他の4委員は、既に昨年の見直し作業で安全性は強化されたとした。
新たに建設されるのはWHの新型加圧水型原子炉「AP1000」。出力は1基110万キロワットで、建設費は約140億ドル(約1兆870億円)。米エネルギー省から83億ドルの融資保証を受ける。1基は2016年、別の1基は17年の運転開始を目指す。
昨年の福島原発事故を受け、NRCは米国内の原発104基の安全性を検証。7月に福島と同じような事故が「米国で起きる可能性はほとんどない」と結論付けた特別委員会報告をまとめていた。
オバマ政権は、地球温暖化対策の観点から、原発建設を容認する方針を示している。
毎日新聞 2012年2月10日 東京夕刊