世間知らずの売れないピアニスト。会社社長だった父の遺産は借金と愛人。経験ゼロで社長を継ぎ、顔も見たくない愛人と会社再生のために付き合うはめに。しかも、頼りにしていた自分の恋人には妻子がいた。
聞いているだけでめまいがしてくる逆境のヒロイン・十倉(とくら)由梨を、NHKで放送中のドラマ「タイトロープの女」(火曜夜10時)で演じている。
大阪府出身の30歳。29歳の由梨とは同年代だ。「現実を受け止めきれない由梨に、ずっとイライラしてます。なんでこんなに甘ちゃんなんだって。見ている人は、もっとイライラしているでしょうね」
物語は終盤に差しかかった。父の愛人で今は継母の恭子(高岡早紀)と激しくぶつかりながらも、少しずつ社員の信頼を勝ち取っていくが、「これから、ちょっとびっくりする展開になる」。残り2話で、まだまだどんでん返しがあるらしい。
負の感情が多く、笑わない役柄だが、本人はかなりの笑い上戸。「笑うところを見つけるのが得意。面白くないことを言っている人でも、その人自体が面白くなっちゃう」と笑う。「前向きなんです。その方が人生が面白く刺激的になりそうな気がする」。ドラマの登場人物に対しても、「みんな欠点だらけ。だからこそ、あらを探すんじゃなくて、欠点を補い合っている様子を見てもらいたい」。
ちなみに恋人がドラマみたいにダメな男だったら?「今後の肥やしになると思って、そのまま進んでみるかも。あとで笑おうかなとか考えて」。その前向きさ、筋金入りです。
(文・向井大輔 写真・鈴木好之)