LED電球の放熱フィンはあった方がいいのか
白熱電球に比べて消費電力を大幅に低減できるLED電球。低価格化や明るさの向上が進んだことで、最近ではすっかり身近な存在になってきました。特に震災以降は、「節電」の手段としてLED電球を購入する方も増えているようです。
家電量販店などで販売されている日本メーカー製のLED電球(E26口金品)を見ると、放熱フィンがなく、スッキリとしたデザインのものが増えてきました。また、光の配光角を白熱電球並みに広げた製品も、今後増えそうです(関連記事)。
一方、韓国や中国、台湾メーカー製のLED電球は、重くて大きいアルミ・ダイカスト製の放熱フィンを用いたものが主流です。最近、こうした海外製のLED電球を分解し、日本メーカー(東芝ライテック)製のものと比較する機会がありましたので、少しご紹介いたします(関連記事)。
当初、日本製のスッキリとしたLED電球は、放熱フィンをなくすことで低コスト化を図っているのではないかと考えていましたが、これは誤りでした。アルミ・ダイカスト製の放熱フィンはさほど高価な部材ではないからです。逆に放熱フィンをなくすと筐体が高温になり、筐体内部の電源モジュールに耐熱性の高い部品が必要になるため、全体のコストは変わらないか、むしろ上がってしまうそうです。東芝ライテックの場合、LED素子にも発光効率の高いCOB(chip on board)品を採用して発熱を抑えていました。つまり、日本製のスッキリとしたLED電球は、高価な部品を採用してデザイン性を高めたものといえそうです。
これに対し、海外のLED電球は低コスト化を強く意識した構成になっていました。具体的には、大型のLEDチップを少数用いた設計が多いようです。LED電球の中で最もコストの高い部品はLEDです。このため、LEDチップ1個当たりの投入電力を増やして明るさを稼ぎ、LEDチップ数を減らすことでコストを削減しています。この場合、LEDの発光効率は低下し、発熱量が増えるため、放熱能力の高いアルミ・ダイカスト製の放熱フィンが必要になります。また、LEDの数が少ないため、光の均一性も低下すると思われます。
今回はサーモグラフィ装置を用いて、点灯状態のLED電球の筐体表面温度を測定しました。その結果、例えばアルミ・ダイカスト製の放熱フィンを備えた韓国Samsung LED社の7.1W品(540lm)は47℃でしたが、放熱フィンがなく薄いアルミ板の筐体を用いた東芝ライテックの7.2W品(600lm)は61℃と高くなっていました。設計思想が違うので、どちらが良い、悪いという話ではないかもしれませんが、このように差があることは事実です。東芝ライテックは筐体の表面温度を問題のない範囲でギリギリまで高く設定することで放熱機構を簡略化し、デザイン性を高めています。
さて、「LED電球の放熱フィンはあった方がいいのか」という点ですが、一概にはどちらがいいとは言い切れないと思います。少なくとも現状では、作り手にとってはあった方が低コスト化しやすいので、使い手にとっても放熱フィンのあるLED電球の方が安く手に入る可能性が高そうです。ただし、その場合は発光効率や光の均一性などに注意が必要かもしれません。一方、デザイン性や発光効率などを重視する方は、放熱フィンのない新しいタイプのLED電球が有力な候補になると思います。個人的には放熱フィンがあってもいいので、安くて発光効率の高いLED電球がほしいです。