Season - 高校編 PART 1 -
2012年、8月25日。
俺たちは約1ヶ月間という長いようで短い夏休みを終え、また学校に行くことになった。 開けても風の来ない窓、飲んでも生温かい水、そしてあの多人数。 そんな悪条件の揃った教室もとい学校に、俺たちはまた行かなければならない。 そう・・・行かなければならない。
学校へと続く道の果てには、これでもかと陽炎を帯びている。
まるで人が口から魂をヒュルゥ〜っと出してるような感じに、モワモワッと出ている。 アニメやマンガでよく見られるやつだよ。 殴られて倒れて、そして口から魂がヒュ〜って。 そうそう、それだよそれ。そーれー。 ・・・なんて、自問自答していても、この暑さは変わらない。
いっその事、雪なんか降っちまえばいいのにな、まったく。 ポクポクとローファーを鳴らしながら暫く歩くと、制服姿がちらほら見えてくる。
おはようおはよう、これまた元気な声が響いてくる。 ったくよー、こんなクソ暑い中でよくそんな元気出せんなーオイ。 そんな時、俺の耳に微かに違うトーンの声が届けられた。 ???「おはよ〜っ!」 優しくて、聞いていると何処か落ち着くこのトーン。 今は力強く叫んでいるが、それでもやっぱり優しさを奏でているというか・・・ 走ってきた彼女は、僕の目の前で止まり、ゆっくり深呼吸を始める。 ???「今日は早いんだね」 お前こそ早いじゃないか。
春川 朱音(はるかわ あかね)―――俺の幼馴染だ。 俺の家のお隣さんで、そそっかしい・・・俺の、幼馴染。 朱音「もうっ、早く出るなら出るって言ってよねっ!」 朱音はいつも俺を起こしに来てくれる。
なんてったって、家まで徒歩10秒だからな。
だが俺だってプライベートは守りたいっ!
なんでいちいち言わなくちゃなんねーんだよ。
それにほら、アレだよ、早起きは三種の神器――― 朱音「三文の徳、ね」
こんなくだらない朝は、もう何十回、何百回繰り返しただろうか。 365日を16年間繰り返してきたが、それでも飽きないのはこの暑さのせいだろうか。 それとも俺は・・・・・ そうこうしている内に、俺は学校の玄関にいた。
ローファーを下駄箱に入れ、上靴を――― ―――ぱさ。 何かが俺の足元に落ちた。 俺は落ちた何かを拾い、そして上靴を履く。 見た感じ、手紙のようだ。 “ラブレター”を想像していただけると幸いだ。 朱音「ん?なになに〜?」 い、いや!?何でもねぇよ!!
つい反射的に大声を挙げてしまった。
さすがの朱音も目を丸くしている。
・・・すぐに開けてみてみたい気持ちは山々だが、ここじゃ人が多すぎる。 俺はその手紙を鞄にしまい、教室へ向かった。 廊下を歩いていると、見慣れない女の子を見かけた。
何だ・・・彼女の目から生気を感じられないというか、虚ろな目をしている。 さすがの俺でもわかるような、悲しい目。 途端、俺の背中に悪感が走った。
よくマンガで“ざわざわ”という表現をするが、そんなモンじゃない。 超微弱な電流が背中を駆け抜けるような、痛くない痛み。 とっさに後ろを振り向いたが、居たのは廊下を歩いていた下級生たち。
こちらを怪しい目で睨んでいる・・・・・というかすごくビックリしているが、まぁ仕方ない。 いきなり後ろ振り向いて、青ざめた顔をしていれば、驚きの一つや二つ。 俺は正面に向き返るが、そこにはもう誰もいなかった。
―――教室。
持参の下敷きを、ワイシャツの下腹部を捲り、汗へと目がけてパタパタ。 するとワイシャツが風に揺られパタパタ。 それに釣られ、隣近所がパタパタ。 触発されて、周りがパタパタ。 お、何だか面白い。 すると、甘い香りと同時に、なにかが翻った。
ふわっと。
朱音「・・・!?」 一瞬、時が止まった。 夏の風物詩、下敷きパタパタ。 これの欠点を、みなさんはご存じだろうか。 これは、下敷きを首元からパタパタするのが正攻法だ、そう信じたい。 だが、俺は下腹部から行う。
するとどうだろうか。
風量によってまちまちだが、衣類という衣類は風で舞い上がる。 ・・・そこを、女子生徒が通るとどうなるだろうか? 朱音「・・・!!!」 時、既に遅し。 ???「姉さーん、お借りしてたノートをお返し・・・に・・・」 時、既に遅し・・・(涙) ・・・痛い。 俺は1・2時間目の始業式、朱音と口を利いてもらえなかった。 因みに、さっきノートを返しに来たのは、後輩の秋山 亜理沙(あきやま ありさ)という。 何故か朱音を敬うヤンキーなんだが・・・今はそんなのどうでもいい。 亜理沙は、さも変態行為をしたんだと思っているだろう。
俺がそんなキャラじゃないってことぐらい知ってるだろーに、アイツは。 にしても、だ。何故にこう毎回毎回竹刀振りまわしやがるかねぇ。 ・・・とりあえずこの誤解を解かない限りは、高校生活まで危ない。 容易じゃねーだろーな、まったく。 静寂漂う体育館に、俺のため息は掻き消されてしまった。 ふと、俺は窓の外を見た。
広がる青空、漂う入道雲。 また、始まるんだな、学校。 けどこの時、俺たちがあんな事件に巻き込まれるとは、思いもしなかった。
タイムリミットが、今始まる。
To be continued...
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[原作]JUN [企画・構成]JUN
[登場人物]
・夏木優祐 どこにでもいそうな平凡人。 ・春川朱音
優祐の幼馴染。 ・秋山亜理沙
優祐と朱音の後輩。 ・謎の少女 廊下で出会った、謎の女の子。 |