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【社会】

原子力機構 震災後も277億円発注 OB就職29企業・団体に

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 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を運営する独立行政法人日本原子力研究開発機構(原子力機構、本部・茨城県東海村)が福島第一原発事故後の二〇一一年四〜十一月の八カ月間に発注した業務のうち、七百十四件、金額にして二百七十七億円分を機構OBの再就職した二十九企業・団体が受注していた。本紙の取材で分かった。

 原子力機構の運営費の大半は国の交付金。福島事故を受け、不透明な原発マネーに批判が出ていたにもかかわらず、多額の税金を「ファミリー企業」に流していた。

 公表資料によると、二十九社・団体には一一年四月時点で、機構出身者七十八人が役員に就いていた。原子力機構が一一年四〜十一月に発注した工事、施設管理など研究以外の業務の合計は三千四百件、八百十八億円で、これらの企業・団体は件数で20%、金額ベースで34%を受注していた。

 最も受注件数が多かったのは、OBが歴代社長を占めるNESI(茨城県ひたちなか市)。サーバーのソフトウエア更新や高速炉の炉心特性解析など七十五件、二十二億四千万円を受注した。

 受注額で最多だったのはナスカ(同県東海村)。随意契約で施設の警備業務三件を受注し、契約金額は三十三億三千万円に上った。少なくとも十五年前から機構OBが社長を務め、〇八年度には総売り上げの97%が原子力機構の仕事だった。

 国から機構には一一年度、運営費などで千七百四十億円が交付された。交付金の半分以上は、販売電力に応じて各電力会社に課税される電源開発促進税が原資。促進税は電気料金に上乗せされ、最終的には消費者が一世帯あたり平均で月額百十円を負担している。

 原子力機構をめぐっては〇九年、勤務実態のない機構OBの役員に給与を支払っていたとして、再就職先の企業が国税当局から所得隠しを指摘された。

 原子力機構の担当者は「契約の大半は競争入札で企業努力の結果。透明性、公平性に問題はない」と話している。

◆利権の構図明らか

 五十嵐敬喜法政大教授(公共事業論)の話 原発は専門的な業務があり、ある程度は特定企業との取引はやむを得ない。ただ、国の独立行政法人が競争もなくOBの再就職先企業に業務を発注する構図は公共工事の利権と似通っており、談合と疑われてもしょうがない。福島第一原発事故後、原発の利権構造が明るみに出ており、これまで温存されてきた「原発ムラ」の不透明な人やカネの流れがあぶり出されるだろう。

 

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