1)ファン転落死
7月7日、アスレチクス対レンジャース戦で、ボールを取ろうとしたファンがスタンドから転落して死亡する痛ましい事件があった。
死亡したのは39歳の消防隊員。ジョシュ・ハミルトン外野手がファンサービスで投げ入れたボールを、スタンドの手すりから身を乗り出して捕球した際転落。6メートル下の地面に頭を強く打ちつけたのだった。転落直後はまだ意識があり、いっしょに観戦に来ていた6歳の長男のことを気遣っていたのだが、救急車内で心停止。病院到着後に死亡が確認された。
男性は、試合前から「長男のためにボールを取る」と張り切っていたといい、球場まで来る途中、長男に新しいグローブを買い与えたばかりだった。ハミルトンによると、その前の回に拾ったファウルボールをボールガールに渡した際、子ども連れの男性が「次のボールはこっちに放ってくれ」と叫んだので、そのリクエストに答えようとしてボールを男性の方向に投げ入れたという。
ハミルトンにしてみれば善意でボールを投げ入れた行為が悲劇を招くことになってしまったのだからやりきれないが、球団もMLB機構もメディアも、いま、突然の悲劇に見舞われることになった遺族への気遣いに心を砕いている。
遺族の要請を入れて、転落時の映像の放映・配信はインターネットも含めて停止。レンジャースは長男のために育英基金を設立した。
2)スペースシャトル退役
子どもの時から宇宙が好きで、SFもよく読んだ。特に好きだったのがフレドリック・ブラウンで、傑作「火星人ゴーホーム」には腹を抱えて笑ったものだった。
宇宙好きだったから、米ソの宇宙開発競争も熱心にフォロウしたし、ニール・アームストロングが月面に下り立ったときに抱いた興奮はいまだによく覚えている。
スペースシャトルになってからは、始めの頃の熱気がなくなり、何となく「慣れきってしまった」ところがあったのだが、7月8日の「最後の打ち上げ」には、さすがに感傷にふけることになった。
私にとって、スペースシャトルの最大の功績はハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げと修理。宇宙がゴッホの描く夜空の通りになっていたことを思い知らされるなど、ハッブルのおかげで宇宙のイメージが一新されることになったからである。
スペースシャトルの退役によって、米国の有人宇宙飛行計画は消滅することになってしまった。今後、私のような宇宙好きが、興奮したり、新たな知識を得たりする機会が激減するかと思うと、悲しい思いを抱かずにはいられない。
中学生の時にフレドリック・ブラウンの「天の光はすべて星」を読んだが、財政削減で停止されてしまった宇宙旅行計画を蘇らせるために奮闘する元宇宙飛行士の話だったと記憶している。この小説が発表されたのは1953年だったが、ソ連がスプートニクを打ち上げて米ソの宇宙開発競争が始まるのが1957年。宇宙開発競争がまだ始まらない時代に、開発の急速な進展だけでなく財政難による中止まで予見していたのだから、ブラウンの先見の明には感嘆するほかない。
3)ウェイランドの殺人事件
ボストン郊外のウェイランド高校を卒業したばかりのロウレン・アストリー(18歳)の死体が見つかったのは7月4日、独立記念日のことだった。
翌日、殺人の疑いで逮捕されたのは、元ボーイフレンドの高校同窓生、ナサニエル・フジタ(18歳)。高校在学中は、フットボールのスター選手。3年間つきあったロウレンと4月に別れた後、ふさぎ込みがちだったという。
フジタの父親は音楽で身を立てるべく、若いときに渡米。努力が実り、いまは、バークリー音楽院の教官としてギターを教えている。裁判所で罪状が読み上げられた際に法廷最後部の席で涙にむせぶ父親の姿がテレビに映されたが、ここ数日間、その映像が脳裏に焼き付いたままとなっている。私自身、異国で子どもを育てる苦労はよく知っているだけに、父親の気持ちを思うといたたまれないからである。
唯一の救いは、こちらのメディアは、加害者の家族に向かって、「世間に向かって謝れ」と無理強いしたり、「イジメ」たりしないこと。「被害者と加害者、二人の若者の人生が同時に台無しになってしまった」という姿勢で、加害者の親に対しても同情的なのである。
「ロウレンの母親も私も、ナサニエルのご両親の苦しみを思うと、いたたまれません。お二人は、ナサニエルに対するのと同じくらいの愛情を、私の娘にも注いで下さったのです。お二人に、是非、私たちの思いを知っていただきたいと思います」とは、被害者の父親の言葉である。
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