国際【産経抄】2月22日2012.2.22 03:04

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【産経抄】
2月22日

2012.2.22 03:04 産経抄

 自虐的言動というのは、ほめられたものでない。だがこれが上質のユーモアで包まれると、思わずほおが緩み、肩のひとつもたたいてあげたくなる。先日、本紙に載った中国版ツイッターでの中国若者による台湾への「対抗心」がそうだ。

 ▼それによると、若者は台湾の友人に自慢された。「今朝みんなで投票に行ってきたよ。夜には誰が国家指導者になるか分かるのさ」。だが私は声を大にして言う。「明日の朝、大陸で投票が行われるとしても、僕らは今日の段階で誰が国家指導者になるか知っている」。

 ▼明日の夜まで待つ必要なんかない。だから「台湾よりずっと先を行っている」という。台湾では国をあげ熱狂した総統選で、馬英九氏が再選された。それなのに「大陸」では国民のあずかり知らぬところで、習近平氏のトップ就任が決まっている。そのことを自嘲しているのである。

 ▼習氏は今月、米国を訪問したさい、もう「最高指導者」扱いだった。一党独裁の国ならではのスムーズな権力移譲に見える。だが実態はそう簡単なことではない。大都市の重慶などで、胡錦濤現国家主席の勢力の巻き返しが始まっているらしいからだ。

 ▼重慶では習氏と同じ元高級幹部の師弟でつくる「太子党」の中心人物、薄煕来氏の腹心が失脚した。後任の市公安局トップに就任したのが、胡錦濤氏直系の共青団のホープだ。習氏の盟友である薄氏の力が弱まり「習近平政権」にも影響するという。

 ▼文化大革命を持ち出すまでもなく、きれいごとの裏で凄(すさ)まじい権力争いを繰り返してきたのが一党独裁の現実だ。日本人が見習うべきは、かの若者の冷めた視線である。「習近平時代来る」などと浮かれることではない。

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