激しい与野党対立から一人でも味方を増やしたいはずの国会で、なぜか双方から「仲間じゃない」と“敬遠”されている勢力がある。消費増税などを掲げる野田政権に反対し、民主党の中堅・若手衆院議員9人が離党して結成したばかりの「新党きづな」だ。「数は力」の永田町に生じた珍現象のワケとは?【青木純】
現在、衆院予算委員会は来年度予算案の審議中。きづなの質問時間は「与野党どちらにも属さない」として与野党の合間に設定されている。
「25分という貴重な時間をいただき、本当に感謝を申し上げます」。1日の衆院予算委員会、質問に立ったきづなの斎藤恭紀政調会長は、そう切り出すと、周囲に頭を下げた。
きづなは与党か、野党か--。予算委での各党の質問時間を決める理事会は、この問題で何度ももめた。
予算委の質問時間は与党枠と野党枠に分け、その枠内で各党が質問時間を分け合う。与野党はともに「仲間ではないから」と配分を拒否。最終的には民主党が一部を分け与えた。
きづなに参加した9人に対して民主党は「反党行為だ」として離党を認めず、まとめて除籍(除名)処分にした。民主党側が厳しい態度をとるのは当然としても、ならば共産党と並ぶ衆院第4勢力として野党側からラブコールを送られるかと思いきや、こちらもつれない。実際、野党側から聞こえてくるのは「一緒には闘えない」の声ばかり。背景には、小沢一郎元代表ときづな議員らの関係への警戒感がある。
9人のほとんどは小沢元代表に近く、09年衆院選での民主党マニフェスト(政権公約)実現に関しては、見直しを進める民主党幹部以上に思い入れが強い。マニフェスト批判を展開中の野党にとって、おいそれと組める相手ではない。さらにきづなの議員らは、新党結成後も民主党の小沢元代表支持グループの勉強会に出ており、野党側は「小沢別動隊」「野党の手の内が(民主党に)筒抜けになる」と不信をあらわにする。
一方の民主党も、きづなとの距離感に頭を悩ます。国対幹部は、予算委で質問時間を分けたのは「『きづなはマニフェストの理念を守ると主張している』と野党に指摘されたため」と明かす。「マニフェスト実現」を訴える議員を突き放すのは難しく、党幹部は「是々非々ではなく『是々々非』なら質問時間で配慮する」と語るが、「党を離れた議員になぜ貴重な時間を与えるのか」という不満もくすぶる。
とはいえ、そんなきづなにも「決断の時」は迫っている。与党と野党を分ける最大のポイントは、政府の予算案に賛成するかどうか。来年度予算の審議は来月初めに採決の見込みだ。「よ」でも「や」でもない中途半端な「ゆ党」状態に決着が付くのは、その時か。
毎日新聞 2012年2月21日 15時20分(最終更新 2月21日 15時31分)