「沈黙の共謀」の証明
渡辺博弁護士の秘密めいた手紙(18)
これまで2回にわけて、三田由香里さんの陳述書を紹介した。
この陳述書(甲18号証)をもってしても、田中幸子さんの渡辺弁護士への懲戒請求は棄却となった。
以下は、私の「感想と解説」である。
厚顔無恥
田中幸子さんの懲戒請求の主張に対し、渡辺博弁護士と山口広弁護士をはじめとする39人の代理人たちは、そもそも、統一教会員に対する「拉致監禁を手段とした脱会説得」など存在しないと反論した。
清水与志雄牧師が強制説得をしていた旨の過去の裁判の証言録、また拉致監禁裁判で親子が和解した裁判記録などを証拠として提出しても、厚顔無恥な彼らは「存在しない」の一点張りだった。
“マインドコントロール”の種本、チャルディーニの『影響力の武器』で書かれている「首尾一貫性の法則」に呪縛されているとしか言いようがない。
とまれ、そうしたときに、元信者の三田由香里さんが勇気を振り絞って、「私の一連の出来事は渡辺先生の手紙通りだった」と明らかにしたのである。眠そうな綱紀委員会の目がパッチリ開き、懲戒相当だと議決してしかるべき証拠だろう。
新たな陳述書の提出で、彼らの間で大騒ぎになったのは確か(メーリングリストでのやりとり)だが、渡辺弁護士がどう釈明したのかは、私たちには分からない。
なにしろ、彼の陳述書を含め61もの証拠 が一切、開示されなかったからだ。前回の沈黙の共謀で書いたように、林田さんに教えてもらうまでは、証拠が提出されていたことさえ知らなかった。
「家から追い出される」ことを心配しながらも陳述書を書いた三田由香里さんは、同書面の中で、綱紀委員会に「私に質問されたいことがあれば、私は積極的に応じるつもりです」と呼びかけていた。
しかし、綱紀委員の誰一人からも三田さんへの問い合わせはなかった。
ちなみに、弁護士には真実の探求は義務と課せられているのだが・・・。トホホのホである。
怠惰な綱紀委員たち
では、綱紀委員会は懲戒請求棄却決定の議決文で、甲18号証をどう扱ったのか。
甲18に絞って、引用する。精緻にやれば枝葉のことも書かなければならなくなるので。
イ 本件手紙は脱会工作を教唆しているか
次に、懲戒請求者はまた、本件手紙は脱会工作を両親に教唆するためのものであると主張するので、この点について判断する。
(ア)懲戒請求者は、脱会工作は拉致監禁を伴うものであるとして、別事件を挙げている(甲18)。しかし本件手紙は、懲戒請求者の両親に対し、脱会を勧めているが、拉致監禁を推奨しているわけではなく、懲戒請求者が挙げる別事件と同じ方法が取られるという必然性やその証拠はない。
(イ)よって、対象弁護士が両親に対し、懲戒請求者の脱会を勧めたとしても、そのことをもって、違法な脱会工作を教唆(不当ないし違法な行為を実行するよう唆すこと)しているとは認められない」
おそらく多くの読者は、<えっ!なんでそうなるの?>と思うだろう。
綱紀委員会は、こういうことを言いたいのだ。
「手紙が原因で三田由香里さんが拉致監禁されたとしても、それはあくまで三田さんのケースであり、本件とは関係がない。田中幸子さんの両親に手紙が送られているが、三田さんと同じ方法(拉致監禁)が取られるという必然性も証拠もいない」
<Bの事実があるからといって、本件Aがそうなるとは限らない>
裁判でよく使われる論理である。
しかし、である。
ふつうの裁判官なら、甲18号証を念頭におき、渡辺氏にこう釈明を求めるだろう。
「あなたは手紙の中で、一生、自らの力では統一教会から脱出することは不可能ですと書きましたね。そして、この問題に詳しい日本基督教団の牧師、あるいは当職に相談し、幸子さんの救出を検討することが必要ですと書いている。そればかりか、あなたからこのような手紙が送られてきたこと、ご両親において幸子さんが統一協会の取り込まれたことを気付いたことを、絶対に幸子さんには知らせないようにしてください。また、ご両親から、幸子さんに対し、この問題について問い詰めたりすることは絶対にやめてくださいとも書いている」
「確かに両親に送られてきた手紙には、拉致監禁の教唆や、推奨するような文言もない。しかし、私にはいくつかの疑問が浮かびます。まず第一に、幸子さんが統一教会に入っていることを、ご両親が問い詰めないのだとしたら、いったい誰が問い詰めるのですか? あなたですか牧師ですか。教えてください」
「あなたか牧師かが問い詰めた場合、ご両親が問い詰めるのと違って、幸子さんを脱会させることができるのですか。イエスかノーで答えてください。イエスなら、どんな魔法のような説得の方法があるのですか。詳しく教えてください」
「原告が提出した証拠に甲18号証がありますね。なかなか詳細に書かれたものですが、三田由香里さんには拉致監禁が行われた。では、幸子さんの場合にはどのような脱会方法を取るつもりだったのですか。これも詳しく教えてください」
法廷の証言台の場なら、渡辺弁護士はしどろもどろになったであろうことは、想像に難くない。
ふつうの裁判官なら、求釈明によって、「手紙の文面」が「拉致監禁」に結びつく可能性(必然性)を追及するだろう。
しかし、裁判官と同じ法曹人である第2東京弁護士会の綱紀委員たちは、そんな追及をしなかった。少なくとも、議決書を読む限り、追及した痕跡はなかった。
監禁されることを証明できる証拠?
再び議決書の一文。「懲戒請求者が挙げる別事件と同じ方法が取られるという必然性やその証拠はない」
今度は、「証拠」について考えてみる。
三田由香里さんの体験記が別事件とみなされ、手紙が拉致監禁に結びつく証拠とみなされないのなら、懲戒請求者の田中幸子さんはいったい、どんな証拠を出せばいいというのだろうか?!
そう、田中さんが三田さんと同じような体験記を書くことである。それを示せば、決定的な証拠となる。
しかし、これは現実的にも論理的にも絶対不可能なことである。
田中さんの両親が手紙に書かれた通り、当職・渡辺弁護士に相談し、川崎経子牧師を紹介される。両親は幸子さんを監禁し、川崎氏が説得する。脱会後、両親から手紙を見せられ、拉致監禁の一連の裏事情を聞かされる。そして、田中さん親子は弁護士事務所を訪れて、献金等返還請求を委任する。
綱紀委員会の屁理屈によれば、田中さんが三田由香里さんと同じような体験をして(体験記を証拠として提出して)はじめて、渡辺弁護士は懲戒相当となるというのだ。簡単に言えば、「あなたが拉致監禁されていない限り、懲戒請求しても無駄ですよ」というわけだ。
ナイフで傷つけられない限り、犯人を訴えることができないというのと同じ。そんなバカな!である。
では、脱会ではなく、監禁中に脱出した場合はどうか。
その場合、「弁護士さんから手紙が届いたんだよ」と、由香里さんが親から教えてもらったような裏事情(渡辺氏の関与)を知ることはできない。だから、渡辺氏を懲戒請求することは、これまたあり得ないことなのである。
綱紀委員の面々はこうしたことを考えたうえで議決文を書いたのだろうか。
考えての棄却の議決文だったとしたら、相当に狡賢いワル連中ということになる。
沈黙の共謀の貫徹
平均的な裁判官と違って、部会長の渡邉光誠氏ら沈黙の共謀者たちは、三田さんに質問をすることはおろか、渡辺弁護士にも釈明を求めることなく、弁護士村特有の「阿吽の呼吸」で沈黙を守ったのである。
それにしても、前述の繰り返しになるのだが、笑えるというか頭痛がしてしまうのは、やはり先の一文、「懲戒請求者が挙げる別事件と同じ方法が取られるという必然性やその証拠はない」である。
田中幸子さん監禁されるという必然性と確実な証拠!?
そんなものがあれば、まっさきに警察に飛び込むに決まっているだろッ。
高偏差値のバカ丸出し。頭が痛い。
*個人的な話になるが、私は高偏差値人間は好きでない。その意味では、三浪して立命館大に入った有田氏や、日大法学部卒だという田中清史氏のほうに好感を抱いている。
ともあれ、弁護士会がこうした体たらくならば、司法への国民の信頼はいずれ消滅する。
一国民としては、利益共同体として守られている「弁護士自治」(弁護士村)にメスを入れて欲しいと願う。
もし裁判員制度のように、綱紀委員会のメンバーを市民が務めるようになっていたのならば、渡辺博弁護士は間違いなく業務停止3ヶ月の処分は下っていたであろう。
渡辺弁護士はミスを犯した
話を転じる。
以前にも書いた疑問だが、渡辺氏は田中幸子さんの懲戒請求、それに付随して提出された三田由香里さんの陳述書に胆を冷やしたはず。
それにもかかわらず、なぜ、彼はまたまた健さんの両親にほぼ同一の手紙を、パシリ君を通して、渡したのかという疑問である。
たんなる手紙中毒なのかもしれないが、考えられる理由を以下に書いておく。
(1)渡辺氏はときおり、火の粉ブログを読んでいらっしゃる。統一教会相手の裁判で、ブログの記事を証拠として提出されたこともあったのだから。
田中幸子さんの懲戒請求に関する記事がアップされていたときはしかめっ面。そのことは、固有名詞(火の粉ブログ)は書いていなかったが、上申書で乙号を非開示にすべき理由として挙げていたことでも明らかである。
懲戒請求者側はインターネット上で懲戒請求書や関連資料を公開している。提出証拠には第三者(A氏)のプライバシーに関する内容が含まれるため、公開によってA氏への損害や対象弁護士の守秘義務違反になる可能性があるとする。
(2)そして、懲戒請求は結局、棄却になった。
渡辺弁護士は、三田由香里さんの陳述書が火の粉ブログにアップされるのではないかとヒヤヒヤしていたが、「渡辺博弁護士の秘密めいた手紙」シリーズは2009年12月25日をもって、その後、更新されていない。
それでいい気になった。私のことを「請求棄却で気落ちしたのだろう」と解釈してしまった。
(3)もう大丈夫だと思ったときに、パシリ君(エイトこと田中清史氏)が耳寄りな情報をもって、手紙を書くように勧めてきた。
そういえば、パシリ君によって、退会しつつある教会員を紹介され、成功報酬を得たこともあったなあ・・・。
それで、「もう一丁やるか」ということになった。
まあ、それほど外れてはいないだろう。
ところで、今回の健さんの手紙では渡辺先生は決定的なミスを犯してしまった。
幸子さんの両親に手紙を出した動機は、幸子さんが勧誘した元信者Aさん(霊の子)から「田中さんを救出して」と頼まれたから、と準備書面で抗弁していた。綱紀委員会はそれを「動機は良し」として、受け入れた。
では、健さんが懲戒請求した場合はどう釈明するのか。
手紙には「ある方」としか書かれていなかった。
渡辺氏は、守秘義務を楯に、綱紀委員会の場である方の名前を明かさない。
心証は悪くなっても、それは可能だった。
しかし、まずいことにある方が自ら名乗り出てしまった。そう44歳になった田中さんちのご子息であられる清史さんである。
「弁護士に手紙を書いてもらったのは私からの依頼によってである」
健さんの母親が受け取った名刺には「ANTI CULT ACTIVIST エイト」。
健さんの霊の親でも霊の子どもない。一面識もないお方。
そうした人から頼まれたからといって、渡辺弁護士が健さんの両親に子どもの脱会を促すような手紙を書かなければならない動機も必然もない。
綱紀委員会の場で、反統一教会の活動家から頼まれたからと釈明しても、通用する話ではない。
いくら身内だからといっても、庇いきれないのではないか。
どう弁明されるのか楽しみである。
*監禁派のパシリ、エイトこと田中清史君には何度か忠告したことがある。前のめりは良くない、と。 君の前のめりのおかげで、君が尊敬している渡辺先生が窮地に立たされるではないか!
反統一は統一以下?
さらに、話を転じる。
先の疑問と根っこは同じ、別の角度からの疑問である。
渡辺弁護士がパシリ君の頼みをひょいひょいと引き受ける。それをしてしまったのはなぜか、歯止めになるようなことはなかったのか−という疑問である。
四十七士じゃなかった、39人の同志たちのことである。
事の是非は抜きにして、仲間である渡辺弁護士を助けたいという気持ちは理解できる。
しかしながら、書面を作成したりチェックしたりする過程で、「渡辺先生、もうこんなことはしないほうがいいですよ」と諫言すべきだった。メーリングリスト上でのやりとりを読む限り、そんな弁護士は誰もいなかった。だから、また手紙を書いてしまったのだ。
統一教会のことを考える。
私は、統一教会の高額エンドレス献金は問題であり、それによって社会と軋轢を生んでいると警告してきた。
しかし、自浄作用はあまり進んでいないようである。
まあ、 この組織はアベルに楯突くことは難しいようだから、浄化されないのは納得できなくても理解はできる。
ところが、それと同じように渡辺氏と仲間たちにも自浄作用が働いていない。
統一と反統一は、きわめてよく似ていると書いてきた。しかし、似て非なるものがある。
日本・統一の場合にはアベル・カインという間違った呪縛がある。しかるに、弁護士にはそうした縛りはない。統一教会員と違い、それぞれがみんな独立した一匹狼なのである。
なぜ、一言、渡辺弁護士に注意しなかったのか。
そうしていれば、渡辺氏が手紙作戦を再開することはなかったし、再び懲戒請求されることは免れることができたはずだ。
渡辺弁護士への私からの諫言である。
もう、火の粉ブログに書かれるようなことはしないほうがいい。 私も同じような内容のことは、もう書きたくない。
これで、この「秘密の手紙」シリーズは18本の記事をもって終わりにします。
と宣言したいいところなのですが、実はもう一つ「とある文章」を公開しければならないのです。
それをご覧になれば、反統一の立場に立つ弁護士と牧師の体質がよ〜く、わかるはずです。
前々ブログで、koyomiさんが「牧師と弁護士の初心」のことに言及されていた回答でもあります。
いかに、初心を忘れ、汚れきってしまった人たちだことか。文脈は違うけど、中原中也の詩がなぜか蘇ってきました。
汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる
- [2012/02/21 17:54]
- 渡辺博弁護士の秘密めいた手紙 |
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