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ES細胞 猿のパーキンソン病改善

2月21日 18時49分

ES細胞 猿のパーキンソン病改善
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手足が震えてほとんど動けないパーキンソン病のサルの脳に、ヒトのES細胞から作り出した神経細胞を移植して歩けるようになるまで症状を改善させることに、京都大学の研究グループが成功しました。
ヒトのES細胞を使って霊長類で症状を改善できたのはこれが初めてで、研究グループでは、ヒトへの応用に一歩近づいたとしています。

研究を行ったのは、京都大学再生医科学研究所の高橋淳准教授の研究グループです。
研究グループは、ヒトのES細胞から神経伝達物質のドーパミンを放出する神経細胞を作り出し、パーキンソン病のサル4匹の脳に移植しました。
その結果、脳の中でドーパミンが放出されるようになり、移植から3か月後には、ほとんど歩けなかったサルが歩けるようになったり、手足の震えが止まったりするなど、4匹すべてで症状の改善が確認されたほか、移植した細胞が腫瘍になるなどの異常も見つからなかったということです。
ヒトのES細胞を使って霊長類で症状の改善に成功したのは初めてで、研究グループでは、今後、神経細胞に完全に成りきることができず、腫瘍になるおそれのある細胞を100%取り除く技術を開発するなど、安全性を高めたうえで、4年から6年以内にヒトへの臨床研究を実施したいとしています。
高橋准教授は、「腫瘍を作らずに症状を改善できたのは、ヒトへの臨床応用に向けた大きな一歩だ。今後も実用化に向けた研究を進めていきたい」と話しています。

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、脳の神経ネットワークで情報を伝える「ドーパミン」という物質が作れなくなり、手足が震えたり、動作がぎこちなくなったりする難病で、患者は、世界でおよそ400万人と推計されています。
脳の神経細胞が次第に壊れるために発病しますが詳しい原因は分かっていません。
50代後半から60代にかけて発病することが多いとされています。
根本的な治療法はなく、不足しているドーパミンを薬で補って症状を緩和する対症療法が行われていますが、服薬をやめると元に戻ってしまいます。
このため、神経の細胞を移植する治療法や細胞の異常を抑える薬の開発に向けた研究が進められています。

ES細胞とは

ES細胞は、受精して4日から5日たった受精卵の内部から細胞の塊を取り出して培養したもので、体のあらゆる組織になるされています。
国内では、平成15年に京都大学が初めて作成に成功し、これまで脳の一部に似た神経の組織を作り出したことなどが報告されています。
ヒトの生命の始まりの受精卵を壊すことになるため、倫理的な問題があると指摘されてきましたが、厚生労働省は、おととし、「命に関わるか、生活に著しい支障の生じる病気で、有効な治療法がない場合」という条件を付けたうえで、ヒトに移植する研究を認めるとする指針をまとめました。
しかし、具体的な審査の基準について検討が続いていることから、国内では基礎的なものに限って研究が行われています。
一方、アメリカでは、企業による臨床研究が始まっていますが、課題が山積しています。
カリフォルニア州のベンチャー企業は、脊髄を損傷して体が動かなくなった患者にES細胞から作った神経細胞を移植する臨床試験を始めたと発表しましたが、効果を証明できないまま、資金不足などを理由に去年11月、研究から撤退しました。
また、マサチューセッツ州の別の企業は、先月、ES細胞から作った網膜の細胞を移植した「加齢黄斑変性」などの患者で視力が回復したと発表しましたが、「移植による効果なのか疑問だ」とする声も挙がっています。