名古屋市の河村たかし市長が、中国・南京市から訪れた市共産党幹部らに対し、「南京事件はなかったのではないか」と述べた。後の記者会見でも「いわゆる南京虐殺はなかった」として、「真実を正すのは、社会的使命だ」とも語った。
河村市長はこれまでも、いわゆる南京大虐殺について、市議会で「深い疑問」を呈すなどしていた。今回は、南京市訪問団へ「南京での討論会」の開催を呼びかけ、実現すれば本人も参加する考えを示した。
河村市長は2012年2月20日、姉妹都市である南京市の訪問団と会談した後の会見で、「南京事件」(河村市長)について、「一般的な戦闘行為の結果、大勢の方が亡くなられた」としつつ、「一般市民(へ)のいわゆる虐殺行為はなかった」と述べた。
「南京事件を勉強してきた」結果だという。「真実を正す」ため、「社会的使命、ミッションを深く感じております」。
河村市長の父親が「南京事件の8年後の終戦時(1945年)に南京にいた」が、現地の人からとても親切にされたと指摘し、「虐殺があったところでそんなに優しくしてもらえるはずがない」と、自らの「分析」も披露した。
あくまで「日中友好を実現するため」の発言だそうで、「(中国に対して)すみません、平和、平和じゃいかんのですよ」と思いを語った。「南京市で南京事件の討論会を開いてほしい」と訪問団に要請したことについては、「私も行きますけど」と、実現と参加に意欲を示した。
河村市長発言を受け、中国外務省の副報道局長は2月20日の会見で、「そのような見解には賛成できない」「確かな証拠がある」と反発した。
外務省サイトの「歴史問題Q&A」で「南京大虐殺」について示している日本政府の見解は、「日本軍の南京入城(1937年)後、多くの非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています」。しかし、被害者数については「諸説あり、どれが正しい数かを認定することは困難」としている。
2010年には、日中両政府の合意で始まっていた日中の有識者による歴史共同研究委員会の初の報告書が公表された。
日本側論文では、「日本軍による捕虜、敗残兵、便衣兵(編集部注:ゲリラ)、及び一部の市民に対して、集団的、個別的な虐殺事件が発生し、強姦、略奪や放火も頻発した」と認定した。
「虐殺行為の被害者数」については、中国側見解の「30万人以上」などに触れつつ、日本側研究として「20万人を上限として、4万人、2万人など様々な推計」があるとした。
一方、中国側は、極東国際軍事裁判(東京裁判)の判決にある「20万人以上」や、南京戦犯裁判軍事法廷が認定した「30万人以上」を挙げ、「捕虜と民間人に対して狂気じみた虐殺を行った」などと記述した。
両論文では、被害者数に違いはあるが、「虐殺事件が発生」したことは共通認識になった形だ。しかし、反論もある。
報告書公表の翌朝、産経新聞は社説にあたる「主張」欄で、「『南京虐殺』一致は問題だ」とかみついた。
『南京大虐殺』は当時の中国国民党が宣伝したものであることが最近の実証的な研究で分かってきた」として、「日本軍による集団的な虐殺の有無も、はっきりしていない」と釘を刺した。あくまで「共同研究に参加した学者間の一致」に過ぎないとも強調した。
「虐殺」の被害者数をめぐる見解の相違だけでなく、「虐殺」そのものの認定にも異論が存在している形だ。
河村市長が提案した、南京市での討論会は実現するのだろうか。インターネット上では、河村市長への支持や非難の声のほか、「まずは日本国内の討論会が必要では?」といった指摘も出ていた。
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