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福島第一原発 変わり果てた姿 現地ルポ

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20日に公開された福島第一原発の原子炉建屋(左から2、3、4号機)=福島県大熊町、代表撮影

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建屋の壁が吹き飛んだ福島第一原発4号機では、作業する人の姿が見られた。中央の黄色い部分は原子炉格納容器の上部=20日午後、福島県大熊町、代表撮影

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トラックの荷台に載せられた高台注水ポンプ=20日午前、福島県大熊町、代表撮影

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原発敷地内での作業後、放射線の測定を受ける男性=20日午前、福島県大熊町、代表撮影

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福島第一原発取材ルート

 東京電力福島第一原発が、昨年11月に続いて、報道陣に公開された。東日本大震災の津波による炉心溶融事故からまもなく1年。前回に比べると復旧が進んだ感はあるが、事故前の取材を経験した記者には、変わり果てた姿が改めて強く印象に残った。

 2003年9月から06年3月まで、福島総局員として事故前の福島第一原発を何度も取材した。緑あふれる整然とした発電所だった。今回、事故後の発電所に初めて入った。ひっくり返った車が穴に落ち、道路が陥没し、崖が崩れて鉄塔がぐにゃりと曲がっていた。

 報道陣がまず目にしたのは、事務本館横の駐車場の仮設の高台注水ポンプだ。原子炉を安定して冷やすための命綱。トラックの荷台に3台のポンプが置かれている。ポンプから直径7センチ余りの細い塩化ビニールの配管3本が道路脇に伸び、原子炉へと続く。

 予備のポンプや緊急時の消防ポンプ車があるので大地震や津波が来ても、大丈夫だと東電は説明する。だが、配管のつなぎ目から、凍結で繰り返し水が漏れた。現場を見て何とも心もとない印象を受けた。

 高台から坂道を下ると1号機の原子炉建屋が見える。春には土手に咲き乱れるツツジの赤が鮮やかだった場所には、津波で流されつぶれた大型タンクが道路脇に置かれている。放射性物質の飛散防止剤の緑色が毒々しい。損傷が最も激しい3号機のタービン建屋そばの放射線量は毎時1500マイクロシーベルト。今回取材した場所では最も高かった。3、4号機は屋根の鉄骨がむき出しになっている。大型クレーンによる、がれきの片付け作業が進む。

 発電所が見渡せる高台でバスを降りた。事故後の発電所で報道陣が屋外に出たのは今回が初めて。爆発で吹き飛んだ4号機原子炉建屋5階で、複数の作業員が行き来するのが見える。鉄骨を切断する器具の火花がチカチカする。

 汚染水処理で出た高レベルの放射性廃棄物の保管施設の建設も進み、多くの作業員や重機が構内を行き来していた。この日作業していたのは約3千人という。

 再びバスに乗り込むと、放射能汚染水をためるタンク群が並ぶ一画に向かった。キキョウやヤマユリが自生し、絶滅危惧種のオオタカのほかヤマバト、キジなどがいた森は伐採され、汚染水をためる巨大なタンクの森に変わった。発電所内には1100本、約18万トン分の汚染水がためられるようになっている。溶けた燃料を冷やすことで出る汚染水が日に日に増えている。すでに7割余りが汚染水で埋まり、3月までにさらに4万トン分のタンクを増設する。

 報道陣への公開は、経済産業省原子力安全・保安院が事故後初めて保安検査を実施するのに併せて実施された。この日は、保安検査官が汚染水処理施設の運転状況を確認した。

 高橋毅発電所長は「2号機の温度計の故障ではご心配をかけたが、原子炉の状態は安定している。作業は廃炉に向けた燃料の取り出しという、新たな段階に入った。初めてのことで様々な課題があるが、みなで一丸となって取り組んでいく」と話した。

 原発の敷地内にいたのは約4時間。積算の被曝(ひばく)量は71マイクロシーベルトだった。(坪谷英紀)

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