「99.9%は仮説」という題名の本から健康・医療を考える |
最近、題名につられて「99.9%は仮説」という本を読みました。だいたい題名や広告につられて読む本に「当たり」は少ないですね。出版業界の不振は、「題名」と「広告」に頼った「売れれば良い」という姿勢が原因ではないでしょうか。例えば「バカの壁」も、私には「ハズレ」でしたが、その後も「バカ」を題名にした本が次々と出版され、出版業界の低落に拍車をかけているようです。(通販で本を購入するようになってから、こういう「ハズレ」に当たりやすくなりました)。
脱線しましたが、この「99.9%は仮説」という言葉を、健康・医療の面にあてはめると、99.9%という数字はさておき、結構「言えてるなあ」と思います。現在の医学常識が、将来は非常識になる可能性は、99.9%とは言えないものの、「相当ある」と思います。すなわち現在の医学常識は「仮説」と考えた方が良いのではないかと思うのです。常識が非常識になるのは、どんな分野でも生まれるものですが、健康・医療の分野となると「命がかかっているので」、常識といえどもよくよく吟味する必要があります。
マスメディアで発信される「健康・医療の報道」は、「出どころ」がほとんど医者、学者や「医学全書的」医学書です。特定の病気・健康法では、「その道の権威」が狩り出されます。彼らはその分野で「博士号」を取ったり、研究論文が有名医学誌に掲載されると、いきなり「その道の権威」に祭り上げられます。言ってみれば彼らは、その道に関しては「確信犯」にならざるを得ないのです。「そうではない」と言いたい医者、学者もいるのですが、彼らの声はほとんどかき消されてしまいます。
「常識が非常識になる」という例は、その類の本がいくらでもあるので、今回は表題の本にも書かれている「ノーベル賞の恥」の例を書きます。1949年の「生理学医学賞」をとったエガス・モニスのロボトミー手術の例です。ロボトミー手術とは、一部の統合失調症患者の、ときに見られる症状のひとつである「狂騒状態」を除くための前頭葉切除術です。前頭葉は脳の指令センターであり、人格そのものの中枢ですから、この手術がいかに非人道的であるかは現代医学の常識です。ところが問題が指摘されるまで、アメリカでは一万件、日本でも五百件以上の手術が行われてしまったのです。当時はこれが「常識」だったのです。
「がんの治療と予防」には、いくつかの常識が人口に膾炙(かいしゃ)されています。私は「健康・医療分野の常識」で、将来「常識が非常識」に変わる可能性があるものには、「がん関連」が一番多いのではないかと思います。例えば、治療面では「全摘出手術が最優先説」、予防面では「がんに良い食べ物悪い食べ物説」を挙げることが出来ます。
私もこれらが「非常識になる」ということ自体、確信を持って言えないのですが、最高の設備で最高の権威が行った、天皇の「前立腺がん全摘出手術後の再発」を考えても、「可能性は十分ある」と言えるのではないでしょうか。「がんに良い食べ物悪い食べ物説」についても、最近の「がん発生ストレス説」や「活性酸素説」と比べると、「非常識になる可能性は大きいな」と思います。
では「何が本当の常識か」ということになるのですが、「今の常識は99.9%は仮説」と考え、自分なりに多方面の情報から「自分が納得したこと」を「自分なりの常識」と信ずることが、仮説の時代を生きる知恵ではないでしょうか。
最近「数万人規模、数年にわたる疫学的研究成果」が発表され始めました。これらの積み重ねが、将来の「常識」を作り出すのではないかと期待します。健康・医療に関しては統計処理を行う前提である「条件揃え」が、非常に困難であるだけに、「母数の規模」が非常に大切なのです。少なくとも数人の医者・学者だけが唱え、学会が認めないような説(例えばアガリクスやコエンチームキューテンなど)が、健康・医療の常識になりそうになる傾向は、「眉につばつけて」見守る必要があります。
なお別項「がんは本当に「怖い病気」なのか・・・「がん」発症の最新のメカニズム」を始め、いくつかの「がん関連の項目」を、「サイト内リンク集」からご覧下さい。
この項目をホームページに追加しようとしていた2006年7月26日の日経「がんナビ通信」に、興味のある記事が掲載されました。本項に関係がありますので、少し長めですが全文引用してみます。
以下引用:
がんと食生活の重要性に疑問を投げかける論文発表
ビタミンなどの積極的な摂取はがん予防に効果なし!?
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がんの予防には食事に気をつけ、運動をする――。「定説」のように思ってきたことが、実はエビデンスに欠ける「仮説」にすぎなかったのかもしれない。Journal of National Cancer Institute誌7月19日号に発表された2本の論文は、がんにおける食生活の重要性に疑問を投げかける結果を示した。
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論文の1つは、がんと食生活の関連性をみた59の試験に対するメタアナリシス研究。ビタミンや食物繊維の摂取など健康的な食生活が、がん患者の死亡率や再発率に有効であるかどうかを調べた結果、食生活の有用性を証明できなかったというものだ。
もう1つは、胃がん予防におけるH.ピロリ菌の除菌とビタミン、ニンニクの効果を比較した無作為化二重盲検試験。がん予防の効果が高いといわれるビタミンCやセレニウムを含むサプリメントを7年以上にわたり服用したが、有効性は示されず、2週間の薬物投与による除菌の方が胃がんの発症をおさえた。またニンニクエキスも同様に、長期間の服用は胃がんを予防するとはいえない結果となった。
●食生活の是正が生存を延長させるエビデンスはない
1つめのメタアナリシス研究は、英国Bristol大学のAnna A. Davies氏ら研究グループが発表した。Cochrane Libraryなど4つのデータベースを使い、がんや前がん病変(preinvasive lesions)の患者を対象とした無作為化試験で、サプリメントも含めた食事介入が、死亡率や再発率などに与える影響を調べた研究を抽出した。化学療法や放射線療法を併用した試験は除外した。
これらの条件のもと選択されたのは、がん患者を対象にした25の試験と、前がん病変の患者を対象にした34の試験。このうち、がん種が特定されていたのは、前者では皮膚がん(4試験)、乳がん(4試験)、膀胱がん(3試験)などを含む18試験、後者では大腸がん(19試験)を含む全34試験だった。
メタ分析の結果、がん患者を対象にした試験において、全死亡に対する「健康的な生活」(食事介入や体重の減量、運動を含む7試験)のオッズ比は0.9(95%信頼区間 0.46-1.77)であり、βカロチンやビタミンCなどの抗酸化物質(7試験)も、レチノール(4試験)も死亡率を改善する結果は得られなかった。再発に関しても同様の結果だった。さらに前がん病変の患者を対象にした試験においても、前がん病変からがんへの進行、前がん病変の再発に対し、食事介入の有用性は示されなかった。
このため研究グループは「がん患者における食生活の是正が、生存を延長し予後を改善するというエビデンスはない」と結論づけた。その理由の1つとして、分析の対象とした試験の多くが、患者の割りつけや盲検化に問題があり、「試験の質が低かった」ことにあるという。そして「エビデンスが集まるまでは、医師は患者に健康的な食事を摂るよう勧めるべきではあるが、健康的な食生活ががん自体を管理する上で最重要であると言ってはいけない」と述べている。
●胃がん予防にビタミンとニンニクは有用性なし
2つめの研究は、中国北京大学のWei-cheng You氏と米国がん研究所のMitchell H. Gail氏らが行った無作為化試験。対象は中国山東省中部の一地域に住む35〜64歳の3365人。
このうちH.ピロリ菌陽性者(2258人)は、アモキシシリンとオメプラゾール、あるいはプラセボの投与を2週間、その後、ビタミンC(250mg)、ビタミンE(100IU)、セレニウム(37.5μg)を含むサプリメントとニンニクエキス、あるいはプラセボの服用を7.3年間続けた。一方、H.ピロリ菌陰性者(1107人)は、ビタミンのサプリメントとニンニク、あるいはプラセボの服用のみを7.3年間行った。
試験は1995年に開始し、1999年と2003年に胃の生検を行った。その結果、除菌治療では重度な慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生、異形成、あるいは胃がんの発症は有意に低下し、1999年の時点でのオッズ比は0.77(95%信頼区間 0.62-0.95)、2003年では0.60(同0.47-0.75)と減少した。また2003年における胃がんの発症率は除菌治療群では1.7%で、プラセボ群の2.4%に比べて低かった。
ところが、ビタミンやニンニクを服用した場合は、こうした良好な結果は得られず、胃がんに対するハザード比はビタミン服用で1.03(95%信頼区間 0.61-1.73, P=0.91)、ニンニクは1.06(同 0.63-1.78, P=0.84)だった。このため「ビタミンやニンニクの長期服用は前がん病変や胃がんの発症予防に有効ではない」と研究グループは結論づけた。
(八倉巻 尚子=医学ライター)
デモシカ漢方 |
「デモシカ」という言葉は、よく教師とか公務員などの職業を選択する時に「冗談半分、卑下半分」に使われる言葉のようです。例えば「これといった目的がないんで教師デモしよかとか、特別な才能がないんで教師シカ出来ない」というように使われています。
我々「漢方業界?」でも昔から「デモシカ漢方」という言葉が使われています。「シカ漢方」というのは、現代ではあまり実害がないので、最初にこれから書いてみます。
「この病気、症状の治療には漢方薬シカない」と漢方薬だけで治療しようとする医者は、現在は希有な存在です。たまに漢方に目覚め、一心不乱に勉強してそれなりに「功成り名を遂げた」医者もいますが、急性感染症まで漢方薬だけで治療する医者は少ないでしょう。(江戸から明治初期まで、西洋薬がなかった時代では、これが当たり前だったのですが・・・)しかし急性感染症まで漢方薬だけで見事に治療する医者や薬剤師がいることも事実ですが、万一のことを考えると少し怖いですね。
問題なのは「デモ漢方」が近頃蔓延していることです。
現代医学の薬を使って治療しているのに、いっこう快方に向かわず患者から「非難の目で見られ始めた」医者が、仕方なく「漢方薬デモ使ってみようか」と「インスタント漢方医」になってしまう場合です。(別項「日本の漢方薬の不幸」参照)。
店頭に相談に見える方の中にも、「医者からこんな漢方薬をもらっていますが・・・」と持参する方がたくさんいます。たしかに健康保険が使えるということは、経済的にはメリットになるのでしょうが、効果がなければ「元も子もなく」、「時間の無駄」ということになります。(それ以上に、枯渇しつつある漢方薬資源の無駄な消費を問題としなければならないのですが、ここにもマネー資本主義に毒された製薬メーカーがあるのです)。
しかし漢方薬を使う医者すべてが「インスタント漢方医」ではありません。本当に真剣に勉強し、立派な業績を残している尊敬に値する漢方医もいます。ただその数は微々たるもので、現在漢方薬を使っている医者の多くは、漢方薬メーカーの講習を数日受けるか、メーカーのMR(医者向けの宣伝担当者)からの情報だけで処方を決めている「インスタント漢方医」だと思います。次々と処方を変更したり、数種類の処方を出す医者がいることからも、その一旦が想像されます。そもそも現代医学の薬と漢方薬を一緒に処方すること自体、「本当に漢方理論がわかっているのか」という疑問がわきます。
「そういえば何か漢方メーカーの小冊子を見ながら処方を決めたみたい」と、「インスタント漢方医」と見抜いた方もよく見かけます。漢方処方を決めるのには、数分間の問診だけではとても無理なのです。30分以上の時間を掛けて、丁寧に問診する医者でしたら評価できますが、「営業的」には成り立たないのではないかと思います。
もうひとつ漢方薬を使ってみたいという方が、ぜひ理解して欲しいことがあります。こらはこのサイトで何回も書いていることなのですが、「漢方薬が治す薬ではなく、効かせる薬である」ということです。これは医者も患者も誤解しています。「治すのは医者でも薬でもなく、あなたの治癒力である」ことをもう一度思い出して下さい。別項「病気を治すという本当の意味を理解出来れば治ったも同然です」参照。
実正堂薬局が薬局新聞で紹介されました |
ブログ「免疫と治癒」に書きましたが、その時の記事が掲載された「薬局新聞」が発行されました。(2006年9月13日号)
左の画面では不鮮明で字は読めませんので、画面下に「PDFファイルのリンク」を付けてあります。
この記事では、40年にわたる実正堂薬局の簡単な歴史、自律神経失調症を相談の中心に置いた経緯と私自身の体験、ご相談に来られる前に知っておいて欲しいこと、そしてこのサイトの10年の歩みと特徴などが書かれています。
著書「その健康でいいですか」は小さいですが写真入りで紹介され、特に「発信された漢方薬、病気の知識」以外の「マスコミ、行政、教育、学会などの医療現場へのさまざまな警鐘」を評価し、「意欲ある若い薬剤師へのエール」として、読むことを推奨して下さっています。
これも小さいですが、薬局内外の写真も載っていますので、ご覧いただけると嬉しいです。
「医療はすでに崩壊している」と考えるべき時か |
「産科医、小児科医の不足は深刻だ」との報道が盛んです。私の住む小田原市でも出産を扱う個人病院が減っています。しわ寄せが市立病院に集中してしまって、もうパンク状態です。最近娘が市立病院で「里帰り出産」をしたのですが、8月の出産なのに妊娠がわかったすぐ後の2月に「運よく」予約出来ました。2月以後は予約が出来なくなってしまったそうです。予約が出来なかった妊産婦はどうしたのでしょうか。
小児科医の不足も僻地だけでなく都市にもおよび、特に小児には必要な「緊急事態」に対応できる小児科医は激減しています。ほとんどの地域では「夜間休日診療所」がもうけられているようですが、車でも1時間以上かかるところも多く「緊急事態」には対応できません。
それに反し眼科医、精神科医、内科医、皮膚科医など手術などのリスクが少なく「簡単に開業、経営が出来る科」に医者が集中しているようです。
もう少し深い問題があります。それが「治せない医療」です。例えば高血圧、糖尿病、高脂血症などの「生活習慣病」の多くは、「検査して投薬するだけ」というありさまですから、患者は減ることはありません。自らの判断で通院を中止する「賢明な患者」以外は、一生「通院と薬漬け」を続けることになります。医者も患者も、これを不思議と思わなくなってしまっているのです。
最近「統合医療」を実践している医師の「がん医療」に関する講演を聞く機会がありました。彼によると国立がんセンターでさえも「がん」、特に転移した進行がんは、「治せない」ということです。実際、施設設備だけは「高度」にはなってきているのですが、「がん組織の縮小」だけを考える治療は、患者のQOLを損なうだけで、救うことが出来ないというのが現実なのです。「延命」という患者にとって「一番望まれる医療」が行われていないのです。余命を宣告するだけで患者の治癒力は激減してしまうのです。
これらのことを考えると「医療はすでに崩壊している」と言わざるを得ません。これは経済的視点からだけの「医療改革」では到底解決出来る問題ではありません。ここまで落ち込んでしまった医療は、すでに「小手先の改革」だけで回復することは不可能です。政治、経済、教育、マスコミなど総合した施策を実行できる「問題意識を共有する指導者集団」が必要なのです。
とりあえずは「医師の偏在」を少なくすることが大切でしょう。しかし医師といえども人間ですから、「リスクが少なく、簡単に高い収入が得られる道」を求めるのは当然です。普通の社会では当然な「努力をした人間に高収入を与える」という原理を、医療現場に示す施策、すなわち保健医療の「新米の医者でも、検査と投薬をすればするだけ点数が増えるという出来高払い」を修正することです。もうひとつ、小児科医、産科医や高度な手術技術、時間外診療、往診などの「大変な医療」に、今までより「きわめて大きな点数」を与え、「ただ検査して投薬するだけ」の医療には、「とことん点数を削減する」といった施策です。
都市部の私鉄に乗るたびに苦々しく思うことですが、「腎臓透析」専門の医療機関の看板が、沿線の駅に乱立しています。透析が必要もない患者を「無理やり透析に持ち込む」という、医者が多くなったということも聞きます。一度透析に持ち込めば、週に数回の透析を「一生涯」続ける必要がありますから、数人の透析患者を抱えるだけで、経営が成り立つと言われるほど透析には「うまみ」があるようです。(人工透析患者一人あたりの医療費は、月額約43万円だそうです)。透析が必要という基準が、例によって「意図的に引き下げられているのでは」との批判もあります。このような「治せない治療」に高額な診療報酬を払う必要があるのでしょうか。
(参考:中長期の医療費適正化効果を目指す方策について・・・「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」(抄)
(平成15年3月28日閣議決定)によれば、年間500万円もかかる透析患者が既に23万人にも達し、しかも年々激増していることがわかります)。
これには大きな抵抗が予想されますが、もはや「手直し」程度の修正では、医療の回復は絶望的になります。繰り返しになりますが、政治、経済、教育、マスコミなどに信念を持った強力な指導者が必要なのです。
さらに大切なことが「教育」です。義務教育では、「人間の体の構造やしくみ」とか「食べ物と栄養」とか「衛生(手洗い、マスクなど)」とかは教えるのですが、一番大切な「病気が治るしくみ」を教えず、「病気になったらまず病院へ」ということで、お茶を濁したり、「責任の放棄」をしています。子供のうちは「急性な病気」が多いので、これで良いのかもしれませんが、これでは大人になった時の「慢性の病気」に対応することは出来ません。少なくとも高校や大学では、「病気になったらまず病院へ」という「責任逃れの教育」は避けなくてはなりません。
少なくとも「自然治癒力の大切さ」、「慢性の病気はなぜ生まれ、なぜ治しにくいのか」、「慢性の病気を予防するにはどうしたら良いのか」といった、「人間が健康な生活を営む知識」を教育しなければなりません。こういった教育がなされない人間が、マスコミや政治、経済、教育の世界に「指導者」として育ったことが、現在の医療の崩壊のひとつの大きな原因だと思います。
これにも強力な指導者が必要です。国民が「大きな声」を挙げないと大変なことになります。
「がん」になった場合の選択肢 |
「がん」という病気には色々な「運命」がからんできます。
まず遺伝子という家系、発生した臓器の種類、発見されるまでの期間とがん組織(腫瘍)の大きさ、臓器だけにとどまっているか否か、がん組織(腫瘍)の進行度や悪性度などが治療前に関係する「運命」です。次の「運命」には、治療をするか否かという大きな「岐路」があります。「治療をいない」という選択肢は、本人の「生き方」にもよりますが、前立腺がんのように年齢によっては「推奨される選択肢」もあります。
治療をする場合には、どの病院に行くか、正確に診断し見落としを防ぐ検査技術、手術か、放射線か、抗がん剤か、代替医療かなどの治療方針、手術をする場合は医者の経験と技量、放射線治療の場合は、「がん組織だけ」に正確に照射する機器の精度、放射線技師の技量、抗がん剤治療の場合は、本当に効果があるのか、副作用がどの程度かなど、これらの選択が「運命」と言えるでしょう。さらに治療がうまく行ったとしても転移が防げるか否か、どこに転移するか、これも「運命」としか言いようがありません。
もうひとつの特殊な選択肢として、海外での「日本では承認されていない治療」、重粒子線治療、自己活性リンパ球療法などの最先端がん治療(実験的治療でしかも極めて高額で施設も少ない)があります。
このように「がん」という病気には、現代医学の粋を総動員しても、「完治への100%の正解」がないだけに、「運命」に左右される要素がたくさんあります。がん専門医さえも、自分や家族が「がん」になった場合の選択肢に苦慮する様子が、「体験本」に書かれています。そのために「がん」への対応には、あやしげなものを含め無数と言ってもよい多くの選択肢が提示されています。
したがって、いざ自分や家族が「がん」と診断された時に、無数にある「運命の曲がり角」を「どの方向に向かうのか」の選択が「生死の境」になってきます。そのため「がん関連本」などを必死で読みまくる方もいれば、「ネット情報」を検索しまくる方も多くなってきました。最初に決めなくてはならない選択が(がんの進行度や悪性度にもよりますが)、「完治を望むか、延命とQOL(クオリティー オブ ライフ)を望むか」でしょう。「すべてを担当医に任せる」という方もいるようですが、自分、家族の命をかけるわけですから、納得のいく選択をして欲しいと思います。
いずれにしても現代医学のがん治療には、過酷な苦痛と著しいQOLの低下がありますから、その苦しみと予後(生死)をたくさん経験している「がん専門医」は、自身ががんになり、それが「悪性の進行がん」であった場合、「延命とQOL」を選択する場合も多いと聞きます。
最近、現代医学の「がん」治療に限界を感じ、代替医療(統合医療)に転じた、ある医者の話を聞く機会がありました。選択の判断の一つとしていただけたらと思い紹介します。
彼が言うには、
1:現代医学では「がん」は治せない。
2:国立がんセンターでさえも転移した進行がんは100%治らない。
3:余命宣告は患者に精神的苦痛を与えるだけでQOLを著しく損ね、これは医者の思い上がりである。
4:がん組織の縮小をねらうより増殖だけを抑えることを考えるべきである。(がん細胞との共存)
そのために小容量抗がん剤療法、小容量放射線療法を主体とする現代医学療法と、心理療法、食事療法、運動療法、解毒療法、サプリメントの使用などを「総合的に行う」という治療法が、患者のQOLには圧倒的に優れると言っています。
代替医療とは、「がんは消えたが患者も死んでしまった」という悲劇をなくすために、患者の「延命とQOL」を最優先とし、可能性がある程度確認されている、上に示したような「あらゆる治療法を総動員」して行う医療を言います。
代替医療は欧米では相当昔から盛んに行われているのですが、日本ではやっと最近になって「代替医療学会」が出来たことからもわかるように、現代医学からは「白い目」で見られていたものです(1998年「日本代替医療学会」発足、現在は「日本補完代替医療学会」)。
私は「袋小路」に陥った「がん治療」のひとつの方向として、代替医療に興味を持って見守っています。ただ私のまわりの人々の例から、「内臓(局所)だけにとどまるがん」については、摘出手術を選択することに賛成です。しかし手術時の「がん細胞の取り残し」は、手術医の経験、技量によることもありますが、大腸がん、子宮がん、膀胱がん、前立腺がんなど「腹腔内がん」の場合の「腹膜播種(はしゅ)性転移(がん細胞のちらばり)」に関しては、肉眼での観察が出来ないことを考えると、手術医の技量ではなく「運命」と考えざるを得ません。
代替医療の内、患者自身が実行できる手段として、いくつかのサプリメントの例を挙げています。
例えばアミノ酸系、ビタミン、ミネラル系、ハーブ系、乳酸菌系、きのこ系、樹皮系、血管新生抑制物質系などを適宜組み合わせ相乗効果を狙うことを提案しています。実際、がん患者の多くがサプリメントを使っているという現実もあり、サプリメントの価値は認知されつつあると思います。私も「がん摘出後の転位の予防」、「延命」という目的にサプリメントを使うことには賛成です。
しかし最近の「アガリクス事件」に見られるように、あやしげな商品が多数出回っていることに注意が必要です。いずれも高額なものが多いので、その選択には、「発売後何年たっているか」という「実績」を中心に、「多くの研究者による多数の論文があるか」(学会も認めないただ一人の学者の、一つか二つの論文だけで、大メーカーが発売するものもある)などの品質面のチェック、「進行がんも治る」といった誇大な「薬事法違反」広告を掲載するネット通販業者や、一度に半年分を「押し付け販売」をするような業者の「販売姿勢」のチェックなどが必要でしょう。