2012年2月19日21時47分
安住淳財務相は19日、北京で王岐山(ワン・チーシャン)・副首相らと会談した。欧州の政府債務(借金)危機に対して、国際通貨基金(IMF)を通じ、日中が協力して支援していくことを確認。アジアへの危機の波及に備え、地域の各国で外貨を融通しあうチェンマイ・イニシアチブ(CMI)の規模を拡大する方向でも一致した。
欧州危機の混迷が続くなか、世界2位と3位の経済規模を持つ中国と日本が国際金融の分野で意思疎通を深め、共同で対応できる関係をアピールするねらいがある。
日本の財務省が公表した会談の説明文によると、欧州危機への対応では、日中は欧州各国に対してさらなる努力を求めるとともに「IMFの重要な役割を支える準備がある」とした。
CMIについては、日中は最大のお金の出し手として、地域の金融協力の強化で一致。危機対応だけでなく、予防の役割を担わせ、規模も拡大する。日本が提案している規模の倍増に向けて、日中を中心に協議を続ける方針だ。
また、昨年12月に首脳どうしで合意した二国間の金融協力を進めるため、20日に初めての作業部会を北京で開く。日本の財務省や日本銀行と、中国人民銀行などが参加し、ドルを介さずに円と人民元を直接交換できる環境を整えるため、意見交換を始める。日本政府の同行筋は、日本が中国国債を購入するため、中国側にすでに100億ドル相当の枠を申請したことも明らかにした。
会談の目的の一つは、25日から始まる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を前に、欧州支援のあり方に対する認識を共有すること。王氏は会談の冒頭で「日中両国の意思疎通や協力が大変大事になっている」と述べた。安住氏も会談後、記者団に対して「(米中と並んで)日中もハイレベルのチャンネルを作れたことが大きい」と成果を強調。双方の中央銀行と財務省による対話の枠組みを立ち上げ、今後も緊密に意見交換を進めることになった。
欧州危機をめぐって、IMFは危機対応のために5千億ドルの資金基盤の拡充を行う方針。両国とも資金の拠出を求められているだけに、「欧米から日中で拠出額を競わされないように意思疎通をはかりたい」(日本政府高官)との思惑もあった。
会談は中国共産党の中枢部門がある北京市・中南海で約1時間20分にわたって行われた。(北京=牧内昇平、吉岡桂子)