※ すべての機能を利用するには、JavaScriptを有効にしてください。

光市母子殺害 元少年の死刑確定へ

2月20日 18時16分

光市母子殺害 元少年の死刑確定へ

平成11年、山口県光市で主婦と幼い娘を殺害した罪に問われた当時18歳の元少年について、最高裁判所は、「何ら落ち度のない被害者の命を奪った残虐で非人間的な犯行で、犯行当時、少年であっても刑事責任はあまりにも重大で死刑を是認せざるをえない」として上告を退け、死刑が確定することになりました。

平成11年、山口県光市で主婦の本村弥生さん(当時23)と生後11か月だった娘の夕夏ちゃんが殺害された事件では、当時18歳だった大月(旧姓福田)孝行被告(30)が殺人などの罪に問われました。
1審と2審の判決は無期懲役でしたが、最高裁判所が審理のやり直しを命じたのを受けて、4年前、広島高等裁判所が死刑を言い渡し、被告側が上告していました。
20日の判決で、最高裁判所第1小法廷の金築誠志裁判長は、「何ら落ち度のない被害者の命を奪った冷酷、残虐で非人間的な犯行で、遺族の処罰感情はしゅん烈を極めている」と指摘しました。
そのうえで、「被告が犯行当時少年で、更生の可能性もないとは言えないことなど酌むべき事情を十分考慮しても刑事責任はあまりにも重大で、死刑を是認せざるをえない」と述べ、被告側の上告を退けました。
これによって、死刑が確定することになりました。
被告は犯行当時、18歳と1か月で、最高裁に記録が残っている昭和41年以降、死刑が確定する年齢としては最も低くなります。
一方、判決では4人の裁判官のうち1人が、「被告の育った環境などを考えると精神的な成熟度が相当低い可能性があり、死刑を避ける必要があるかどうか、さらに審理が必要だ」という反対意見を述べました。
最高裁で死刑が確定する事件で、反対意見が付くのは極めて異例で、元少年に死刑を言い渡すかどうか、裁判官の中でも意見が激しく対立したことがうかがわれます。
判決について、最高検察庁の岩橋義明公判部長は、「社会に大きな衝撃を与えた凶悪な事件であり、最高裁判決は妥当なものと考える」というコメントを出しました。
一方、被告の弁護団は、「被告に殺意はなかったことは専門家の鑑定などで明らかになっていたのに、裁判所は事実を真正面から検討しようとせず、判断を誤っており、極めて不当だ。被告は、逮捕以来13年間、被害者の無念さ、遺族の憤りを真摯(しんし)に受け止め、反省の日々を送っている。誤った判決を正すため、今後も最善を尽くしたい」というコメントを出しました。

NHKは、少年事件について、立ち直りを重視する少年法の趣旨に沿って、原則、匿名で報道しています。
今回の事件が、主婦と幼い子どもが殺害される凶悪で重大な犯罪で社会の関心が高いことや、判決で元少年の死刑が確定することになり、社会復帰して更生する可能性が事実上なくなったと考えられることなどから実名で報道しました。

少年事件は厳罰化の傾向

少年の事件では、少年の立ち直りの可能性を考慮して成人とは異なる取り扱いをすることになっていますが、厳罰化の傾向が強まっています。
少年が事件を起こしても成人に比べて未熟だとされる少年の立ち直りの可能性を考慮して、18歳未満には死刑を言い渡すことができないなど法律上、成人とは異なる取り扱いをすることになっています。
これまで、少年に死刑が言い渡されたのは、▽市民4人を射殺して平成9年に刑が執行された永山則夫元死刑囚の事件や、▽千葉県市川市の一家4人が殺害された事件など被害者が多い例外的なケースに限られてきました。
こうしたなか、少年による凶悪な事件が相次いだことを受けて、平成12年に少年法が改正され、刑罰を科す対象の年齢が引き下げられたほか、重大な事件を起こした16歳以上の少年は原則として起訴されるようになりました。
平成18年に今回の事件の裁判で、最高裁が、「少年というだけでは死刑を避ける決定的な理由にならない」という判断を示したことは、その流れを決定づけました。
おととし11月には、宮城県石巻市で、若い女性2人が殺害された事件の裁判員裁判で、当時18歳の少年に死刑が言い渡され、裁判員は、判決後の会見で、「人の命を奪う罪は年齢を問わず、大人と同じ刑で判断すべき」と述べました。
20日の最高裁の判決は、少年であっても凶悪な事件を起こした責任や結果を重視するという姿勢を改めて示したもので、少年による重大事件の厳罰化の傾向がさらに強まりそうです。