前出の中林氏はティッシュとコンビニのレジ袋をいつも鞄に入れている。万一、エレベーターなどに閉じ込められたとき、レジ袋にティッシュを詰めれば応急の簡易トイレになるからだ。
一方、前出の高橋氏は薬局や病院でもらえる「お薬手帳」を携行している。
「私は高血圧など持病の薬を飲んでいるのですが、被災後の病院はごった返して診察もままならない。『お薬手帳』があれば超法規的措置として診察なしで薬がもらえる可能性もあります」
さらに、キーホルダーに小さなコンパス、救難用の笛、小型のマグライト(懐中電灯)をぶら下げているというのは前出の渡辺氏だ。防災用に特別なセットを作っても丸ごと忘れてしまうため、カギと一緒にしておくのがポイントだという。
伝言ダイヤルより公衆電話
被災後、バラバラな場所にいる家族とはどうやって連絡を取るか。都市震災軽減工学を研究する東京大学大学院の目黒公郎教授は公衆電話を活用するという。
「停電するとカードは使えませんが、10円玉ならかかる。最近では大災害が発生するとお金を入れなくてもかかる機種もありますが、念のため10円玉は常に持っていたほうがいい」
非常時には被災地の外から被災地への通話と、被災地内同士での通話は制限されて難しくなる一方、被災地から外部への電話は比較的かかりやすい。
「家族との連絡は、首都圏の外に住む田舎のおじいちゃんとか親戚を経由すると決めておく。『三角中継』といって、連絡がずっと取りやすくなります」(目黒氏)
NTTの災害用伝言ダイヤルを使う手もあるが、目黒氏は「過度な推奨はミスリード」と警告する。システムが記録できるのは800万コールだが、首都圏大震災では帰宅困難者予想数だけで650万人。1つの番号に対し伝言1回と制限され、「大丈夫?」と入れただけでもう使えない可能性もある。一度で有効な伝言を残すのは意外と難しい。
家族が再集合するためにはどんなルールを決めているのか。前出の国崎氏は、
「子供たちとも『それぞれ自分のいる場所で生き延びよう』と決めています。親や子供に会いに行くため危険な行動を取るより、結局、その後に再会できる確率は高くなる」という。そして震災の最初の混乱が収まった後、自宅近くの避難所などに向かう。この際、「○○小学校の鉄棒の前で朝の9時と午後3時に」など、互いに長時間待ち続けたり探し回らないよう、具体的な約束をしているという。
だが、被災後すぐに家族のもとに駆けつけ、無事を確かめ合いたいと願うのが人情だ。そのための約束の仕方はないものか。全国的にも珍しい防災専門の学科を持つ兵庫県立舞子高等学校環境防災科の諏訪清二教諭は、災害の現実は甘くないと厳しく指摘する。
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