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県内全原発停止 目先の電力より安全優先
(2012年2月21日午前6時58分)
関西電力の高浜原発3号機が定期点検に入り原子炉を停止。県内の商業炉13基すべてが停止する異常な事態だ。4月下旬には国内54基が全停止する可能性がある。東京電力福島第1原発事故の影響は計り知れず、国内の電力需給を一層厳しくする。
しかし、重要なのは原発の安全確保であり、国の原子力規制の再構築だ。電力供給県として果たすべきは拙速な再稼働ではない。住民、県民の安全・安心をどう確保するかである。
総発電量の半分を原発に頼る関電は非常事態にある。八木誠社長は「電力の安定供給に危機的状況」、豊松秀己副社長は夏場の電力に関し「やりくりできるか自信がない」とも述べた。早期稼働を促す発言である。
だが原発依存型の消費地であるはずの関西では、橋下徹大阪市長が代表するように「脱原発」を求める声が渦巻く。国の安全基準が示されず、原子力防災対策も未整備。原子力安全規制庁も発足していない中で再稼働を議論する理由はあるのか。
経産省原子力安全・保安院は関電大飯原発3、4号機の再稼働に向け、関電が提出した机上の安全評価、ストレステストの1次評価を「妥当」とした。24日からの県会、3月1日からのおおい町会を前に、保安院は県原子力安全専門委員会で説明を行った。夏場までの再稼働をにらむ性急な動きにみえる。
評価結果は原子力安全委員会のダブルチェックを受け、最終的には野田佳彦首相ら4閣僚が再稼働を判断する。そこに地元の同意が不可欠である。
県や地元は暫定的な「安全基準」を求めている。保安院はそのベースとして、福島事故の知見を反映した5意見聴取会の検討結果に基づき中間報告した。事故の教訓から30項目の対策を盛り込み、高経年(老朽)化に関しては「地震動によって機能を失うような経年劣化の影響があったとは考え難い」とした。
しかし、高濃度の放射能に汚染された現場の確認はできず、あくまで机上評価。地震・津波評価も推定の域であり、保安院は原発周辺の活断層や過去の津波の痕跡などを再調査するよう各電力に求めている。
どこまで負荷を掛ければ構造・機能破壊に至るかをチェックするストレステスト2次評価を重視する学者の意見もある。安全への環境が整いつつある段階とは言い難い。
枝野幸男経産相は「安全性と供給力の確保は別次元の問題」として、安全と安心が最優先されると言明。再稼働には「地元への説明と住民を含めた一定の理解」が必要とする。どう理解を得るのか。一方で県は県民に十分な説明ができるのかが問われ、限定的な議会の場だけでよいのかという疑問もある。
安全評価や各種意見聴取会では、評価手法の不備や課題を指摘する厳しい意見が相次いだ。冷静な議論の積み上げへ、国の徹底した情報開示が必要だ。
福島原発事故は、原発の安全性より経済効率を追求してきたわが国の原子力政策を根底から覆した。政府は今夏をめどに革新的エネルギー・環境戦略を打ち出すというが、再生可能エネルギーへの転換を含め、適切な電源構成を導き出すのは困難である。迷走する日本。足元の電力逼迫(ひっぱく)に目を奪われていては、将来戦略は描けない。
