メディアジャーナリストであり、MIAU代表理事の津田大介氏が、インターネットに関わる様々な問題を討論する番組「ネットの羅針盤」。2010年11月08日の第2回は、弁護士の小倉秀夫氏、ブロガーのheatwave_p2p氏、MIAU幹事会員の八田真行 氏を迎えて、現在日本が中心となって取りまとめている「模倣品・海賊版拡散防止条約 (ACTA) 」が、海賊版の防止だけでなくインターネットの規制など様々に影響をもたらす点について議論が行われた。
前半では八田氏から、日本や米国が中心となって締結を目指すACTAの問題点について解説が行われた。
ACTAは偽ブランドバッグなど海賊版商品の取り締まりを目的とした枠組みだが、取り締まり対象にはインターネット上で流通する知財、コンテンツも含まれている。この議論は各国政府や大手の著作権者団体の間で秘密裏に行われていたが、2008年より「Wikileaks」にて、ISPに著作権侵害を行っているユーザーの情報を捜査令状無しに提供させる制度、国境におけるPCやiPodの内容捜査、著作権侵害サイトの切断や、ユーザーのインターネット利用を停止する内容についての議論や条文案がリークがされたことから、問題の認知と議論が加速した。ACTAをきっかけに表現の自由や通信の秘密といった基本的人権の侵害やインターネットの規制に繋がる可能性、日本政府が自国で施行したい規制内容を国際条約に盛り込むことで、日本国内の法律として通しやすくするポリシー・ロンダリングといった行為が問題であるという。
後半ではACTAのもう一つの問題点として、購入したコンテンツを特定の機器でしか利用できないよう法的に規制する「アクセスコントロール」について、「ニンテンドーDS」にて実質的に違法コピーしたソフトを動作させる目的で流通している「マジコン」を中心に議論が交わされた。具体的には、ソフトウェアのコピー品の流通という著作権侵害は問題だが、ユーザーが購入したコンテンツを再生できる機器について法的に規制するアクセスコントロールも問題であるという内容だ。
津田氏は「マジコンの問題をしっかり規制できる方法があればそれでいい。だが、規制の方法をインターネットの規制や検閲に繋げられるのは問題。時間のかかる立法で規制するのではなく、経産省などが共通のアクティベーションプラットホームを構築する方法もある」とした。また、アクセスコントロールの弊害として、八田氏はAmazonの電子書籍端末「Kidle」にてユーザーが購入した電子書籍が、Amazonと著者間での契約問題からユーザーの端末より一斉に削除された問題を紹介。heatwave_p2p氏は「あるプラットホームのサービスがいつまで提供されるのか。サービス停止とともに購入したコンテンツが使えなくなるだけでなく、(以後の)文化からも消える可能性がある」と危惧した。
今回の放送では視聴者からも質問を寄せられたように、ACTAに賛成する立場のゲストが参加しなかったことから、議員などへ地道に働きかけて行ければという結論に終わった。津田氏の期待通り、今回の放送をきっかけに双方の立場からの今後の議論が進むことを期待したい。
『模倣品・海賊版拡散防止条約 (ACTA) がヤバい』MIAU Presents ネットの羅針盤
(番組はタイムシフト機能で2010年11月13日まで視聴できる)
(島徹)