平成11年、山口県光市で、主婦と幼い娘を殺害した罪に問われた元少年の死刑が確定することになりました。少年であっても、刑事責任はあまりにも重大だとして、死刑はやむをえないと判断した最高裁の判決は、少年による重大事件の厳罰化の傾向をさらに強めることになりそうです。
平成11年4月、山口県光市で主婦の本村弥生さん(当時23)と生後11か月だった娘の夕夏ちゃんが殺害された事件では、当時18歳だった旧姓福田・大月孝行被告(30)が、殺人などの罪に問われました。
1審と2審の判決は無期懲役でしたが、最高裁判所が審理のやり直しを命じたのを受けて、4年前、広島高等裁判所が死刑を言い渡し、被告側が上告していました。
20日の判決で、最高裁判所第1小法廷は「犯行当時少年であっても刑事責任はあまりにも重大で、死刑にせざるをえない」として、被告側の上告を退け、死刑が確定することになりました。
少年の事件を巡っては、凶悪な犯罪が相次いだことを受けて、平成12年に少年法が改正され、重大な事件を起こした16歳以上の少年は原則として起訴されるようになるなど厳罰化が進みました。
今回の最高裁の判決は、少年による重大な事件では、立ち直りの可能性よりも事件を起こした責任や結果を重くみるという姿勢を示したもので、少年犯罪に対する厳罰化の傾向をさらに強めることになりそうです。
山口県光市で主婦と幼い娘を殺害した罪に問われた当時18歳の元少年について「少年であっても死刑にせざるをえない」と判断した最高裁の判決に対する評価は、専門家の間でも分かれています。
このうち、少年法が専門の千葉大学大学院の後藤弘子教授は「判決では『更生の可能性もないとはいえない』と指摘しており、それならば死刑を適用すべきでなかった。少年であっても、結果が重大であれば死刑になるという流れが加速してしまうおそれがある」と批判しました。そのうえで「少年は未成熟であるがゆえに、大人よりも残虐になることがある。家庭環境などの影響もあるので、責任のすべてを少年に負わせていいのか考慮しなければならない」と述べました。
一方、刑法が専門の首都大学東京・法科大学院の前田雅英教授は「最終的に、これだけのことをしたら18歳でも死刑になるという判断は、多くの国民にとってふに落ちる判決だと思う。少年の成熟度の話は広島高裁でも審理していることから、最高裁の判決は、死刑に対する世論も考えると国民一般からしても分かりやすいと言える」と述べ、判決を評価しました。
NHKは少年事件について、立ち直りを重視する少年法の趣旨に沿って原則、匿名で報道しています。今回の事件が、主婦と幼い子供が殺害される凶悪で重大な犯罪で社会の関心が高いことや、判決で元少年の死刑が確定することになり、社会復帰して更生する可能性が事実上なくなったと考えられることなどから、実名で報道しました。
[関連リンク] |
|