2012年2月21日火曜日

日本から逃げた先に幸せはあるのか?

2月2日から3ヶ月の予定でバンコクに滞在中の新井です。こちらにお立ち寄りの方、在住の方など、是非お気軽にお声がけ頂ければと思います。

こちらでタイ語を学んだりしながら、のんびり暮らしています。と言いたいところですが、スケジュールのきついプロジェクトがあるので毎日バリバリ仕事をしています。

私は、これまでロンドンやソウルなどに3ヶ月くらい長期滞在して語学を学んだり遊んだりして暮らしてきた経験がありますが、今回も同じような遊学の予定です。前回までと違うのは、今回はフルにインターネット接続された状態で、日本と同じように仕事をこなしながら生活するということです。

べつにバンコクに永住しようとか、仕事を見つけようとか、そういう考えがあるわけではありません。単にバンコクにしばらく暮らしてみたくなっただけです。10年前とは違い、いまは高速なインターネットが容易に手に入る時代ですので、このように海外に長期滞在をするのは簡単になりました。

さて、最近ちまたでは、日本はもうダメだから海外に逃げようとか、富裕層が海外に逃げるとか、そのような言説が目立ちます。

ですが、そのような人たちは、はっきり言ってまともに結果を考えているとは思えません。逃げた先にどのような幸せがあるのか、それが全くわかりません。

「日本が軍事独裁国家になり戦争に突入するから逃げろ」という妄言を吐いた人もいましたが、世界で日本よりも戦争や独裁から遠い国というのは数少ないような気がします・・・ この人の住んでいるアメリカ合衆国という国は、あちこちで戦争をやっていて大勢の戦死者を出し、テロ対策のために空港で全乗客を全裸スキャナーで検査するような国だったような気もしますが?

バンコクは物価も安く、とても暮らしやすい国です。しかし、この国で住み続けるためにはビザというものが必要です。この国では、起業家がビザを取るルールはなかなか厳しいようで、簡単に取るというわけにはいかなさそうです。

こちらで日本人の現地採用の仕事を探すと、だいたい5万バーツ~6万バーツ(13万円~15万円)というのが給与の相場です。一時的に海外で仕事をする体験は悪くないかもしれませんが、長期的に働くとなると将来の貯蓄やキャリアパスに不安を感じます。いつまでもタイに住んで働けるとは限らないのですから。タイだって、どんどん成長して生活費もあがるでしょうし、おそらくは日本人の居場所も少なくなるでしょう。そう考えると、私はちょっとその給与で働こうとは思いません。

外国で働くということは、ビザの問題と、能力発揮の問題があり、とても難しいことだと思います。ビザを考えると起業家やフリーランスという選択肢はまず不可能です。能力を発揮するという点からも、外国人が仕事をするのはどの国でもすごく不利になるでしょう。言語力で劣るだけでなく、人脈、文化の理解、法制度など全ての面でマイナスなのですから。

海外に住むということは、法的に極めて脆弱な条件に置かれることになります。ちょっとした軽犯罪ひとつで追い出されたり、政治的に問題発言をしただけで追い出されたりするかもしれません。会社を辞めれば、次の仕事を見つけるまでにビザが切れてしまうかもしれないのです。

たしかに金型や溶接の技術者など、一部の特殊な技能を持つ方は、タイの方が好待遇を得られるということもあるかもしれません。極めて優秀なソフトウェアエンジニアや研究者はアメリカにいったほうが好待遇を得られるでしょう。しかし、そういう例はごく僅かです。バンコクでは現地採用の日本人のプログラマの給料は5万バーツ(13万円)程度です。

税制のために富裕層が海外に逃げるという意見を持つ人もいますが、その場合は日本と縁を切る覚悟が必要ですね。日本にある程度滞在している場合には、日本で課税される可能性があるわけですから。税金が安くなるからといって、日本と縁切りするほど魅力ある税金の安い国があるでしょうか? 香港やシンガポールは永住するにはちょっと退屈ですよね。

もちろん私は、国際的であることは素晴らしいことだと思っています。プログラマで英語ができないとか、ちょっとあり得ないと思うので、さっさとセブ島にでも留学すべきだと思います。海外体験を積むことも素晴らしいことだと思います。

日本人ならいつでも世界に飛び立てるのに、世界がどんなに魅力的だということを知らずに死ぬのはもったいないです。ラオスの山奥で農業をして暮らす人々も、サンフランシスコでソフトウェアの仕事をして暮らす人々も、どちらも出会う価値のある人々です。まあ、私は結局のところ、日本人以外では韓国人が一番つきあいやすいと思いますけどね。文化的に近いので。アメリカ人とかは個人的にはちょっと付き合いにくいです。

海外に行けば、日本がいかに素晴らしい場所であるか、戦後の日本人がいかに頑張ってアジアの人々の尊敬を勝ち取ってきたか、そんなことを学ぶこともできると思います。

海外で一旗あげるぞ! 武者修行だ! 留学だ! 起業だ!という野心に燃える方は素晴らしいので是非がんばってほしいものです。

しかし「日本はもうダメだ」などというマイナスな考え方をばらまく人は、海外に行った先に何があるのか、もう一度考え直して欲しいものだと思います。

私には、ちょっと世界のどこかの国で、日本人が働いて暮らすとして、日本よりも楽に良い待遇や環境が得られる場所というのは思いつきません。そこに住む日本人達は、彼らなりの思いや経験を経て、死にものぐるいで頑張って、ようやくそこにいるのではないでしょうか。戦争や政変でも起こらない限り、日本人にとって、海外の方が暮らしやすいなどという日は来ないでしょう。

0 コメント:

コメントを投稿