「浮き上がった部分にコンクリートを流し込むために、床下の土を掘り出しました。すると、空き缶やカーペット、ハイヒールのかかと、スリッパ、レンガ屑などのゴミがボロボロ出てきたのです」
出てきたゴミの処理費用などがかさみ、当初は200万円だった見積もりが約300万円まで膨れ上がることに。タタミ2畳分ものカーペットが埋まっていた隣家に至っては、工事費用は350万円にも上った。
「ゴミ処理の費用を、埋めた三井ではなく住民が払わされるなんて、信じられなかった」(前田さん)
訴状には、コンクリート塊や廃棄物がニュータウンの敷地内に埋められていたことも明記されている。
三井不動産の「責任」
「パークシティタウンハウスⅢ」の分譲が始まったのは1981(昭和56)年と、現在から30年以上も遡る。それでもなお住民32人が、三井不動産を提訴したのには理由がある。原告側弁護団の重田和寿弁護士は、こう語る。
「同時期に分譲した隣のURの住宅地は、地盤調査と液状化対策をきちんとやっており、今回被害は出ませんでした。一方で、三井不動産に調査、対策をしたのか尋ねると『当時の資料が一切残っていない』と答えるだけなのです。地盤調査をしたのかも分からない。これは、まったく何もしていないと考えられます」
東日本大震災は、M9.0という未曾有の規模だった。30年以上前に、三井不動産は災害を予見する義務があったのか。
この分譲住宅の建設当時、木造低層の住宅建設に対して、地盤の安全基準を定めた法令はなかった。今回の裁判での争点は、三井不動産側に「瑕疵」があったかだ。アディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士は、「瑕疵」の立証と「瑕疵担保責任」の負担期間がポイントになると語る。
「今回のケースは、宅地の耐震性が問題となります。浦安市で想定された地震の規模と液状化の危険性が、建築業界の最高の知識判断においてどの程度予想されたか、本件土地がそれに耐えうる耐震性を有していたかが、瑕疵の有無を判断する上での重要な争点となるでしょう」
では、瑕疵が立証できたとして、どこまで責任を問えるのか。
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