検証ルポ 液状化の街・浦安住民から訴えられた三井不動産の「責任」

2012年02月19日(日) フライデー

フライデー経済の死角

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「通路を挟んだ向かいの棟と同じ高さだったが、コンクリートの分だけ家が高くなった」と前田さんは語る。右下は床下から出た空き缶

 原告団の一人に名を連ねる住民の前田智幸さん(65)も、地盤の液状化により自宅が被害を受けた。

「家の表と裏で、28cm傾いていました。角度でいえば1.5度ほどなので見た目では分かりづらいのですが、実際傾いた家に暮らしている間は、かなりの違和感がありました。トイレにかけているカレンダーは、いつ見ても傾いていましたね」

 ダメージは、家屋だけでなく住民の身体にも及んだ。傾いた家で暮らす前田さんが、体調に異変を来したのだ。

「夜中にトイレに起きて暗闇の中を歩いていると、壁にぶつかってしまって青アザができたことがありました。おかしいなと思って、昨年6月11日に耳鼻咽喉科で精密検査を受けたところ、『三半規管』に異常が起きていると診断されました」

 体調の異常を訴えたのは、前田さんだけではない。前出の上野さんも頭痛やふらつきの症状が出て、まっすぐ立つことが困難になったという。

 液状化に対する不安は、住民によってまちまちで、対応の違いを生んでいる。傾いた家に住み続けることができず、近所に賃貸住宅を借りた住民もいるといい、前出の中村さんが、その理由を語った。

「ジャッキアップ(注3)することが家を水平にする近道ですが、近いうちに大地震が来ると予想されている中で、それだけでは不安だと思う住民もいます。一旦、家屋をすべて取り壊した上で液状化対策を施し、その後に建て直したいと考える人が、特に若い住民に多いです」

 逆にジャッキアップをしたことで、三井不動産に対しさらなる怒りが湧いたのが、前田さんだ。前田さんは7月、自宅と棟続きになっている隣家ともどもジャッキアップを試みた。

注3)ジャッキという工具を使って物を持ち上げること
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