10日ほど前まで、東電国有化が既定路線のようになっていた。国が議決権付きの東電発行株を3分の2まで取得して「実質国有化」し、東電経営陣の総入れ替えや発電部門の売却を行うと新聞報道されていた。昨年末頃は、発送電分離まで行うと伝えた新聞もある。
ところが、2月10日付朝刊で、読売と朝日は、「国が取得できる株式は3分の1にとどまり国有化は難しい」と報道し、両紙は軌道修正した。
今のところ、2分の1を超えるか超えないかの攻防戦だというが、こういう話は第一線の記者もお任せする。
どっちに転んでも、ちょっと離れたところから見ていると、政策として初期動作の失敗を取り戻せない間抜けな「解」にしか思えない。
3月末までに東電と原子力損害賠償支援機構の間で「総合特別事業計画」を決定する。支援機構から東電への1兆円増資がポイントだ。
東電、経産省、財務省、それぞれの思惑
東電問題のプレーヤーは、東電自身、それを監督する経産省、それに政府のカネを握っている財務省がからんでいる。東電の株式価値は3000億円程度なので、1兆円も普通株で増資すれば当然3分の2以上の議決権を持つ。この議決権を巡って三者の思惑がぶつかっている。
東電側は議決権のない優先株を求めている。つまり東電の主張は、国の議決権はゼロだ。一方、経産省は、東電を押さえて発電部門の売却などを行うとしており、そのために人事権が必要と思っているので、3分の2以上を求めている。
これに対して、財務省はちょっと腰が引けている。経産省のように3分の2となると、東電に関わる賠償が国にかぶってくることを恐れているからだ。東電の株式を取得するのは東電救済機構(正式には原子力損害賠償支援機構)であり、国に直接難問が持ち込まれないように作ったものであるが、そんな方便は通じない。かといって、東電のいうとおりに議決権ゼロでは、東電擁護となって世論から非難を浴びる。まして今、悲願の消費税増税を打ち出しているときに、東電を救済して増税かと言われたくない。これで3分の1というわけだ。
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