2010年04月01日
キングコーン
日本は世界一のトウモロコシ輸入国で、年間約1700万トンを輸入し、世界の輸入量の2割を占める。その9割が米国からの輸入だそうだ。日本国内のコメ生産量が年間約1000万トンだから、いかに大量に輸入しているかがわかる。その75%までが家畜の飼料用とのこと。

また、広範囲に活用されていることに驚かされる。
発酵食品としては、バーボンウイスキー、ビールなどの酒類、ミリン、お酢の原料になる。
ポップコーンやコーンフレークなどのスナック菓子の原料でもある。トウモロコシの加工デンプンであるコーンスターチから水アメ、ブドウ糖やオリゴ糖などの糖化製品がつくられ、菓子、清涼飲料水、パン、練り製品、マヨネーズ、サラダドレッシング、ケチャップ、ウナギや焼き鳥のタレをはじめ、健康食品から医薬品などに使われている。とくに、ファーストフードのほとんどに、トウモロコシやその製品が含まれている。
相当に深刻な問題を取り上げているが、全体としてほのぼのとした雰囲気が漂っていて、とても観やすいしわかりやすい構成だった。大学生の二人が、毛髪でDNAの検査をしたところ、身体の大半がコーンに由来する食物から出来ているらしいという結果が出たのに驚き、彼らはコーンを巡る旅を始める。アイオワ州のコーン畑を1エーカー借り受け、地域の人達に教えてもらいながらコーンを生産する。そして、その収穫物がどのように食物に変容しているか、を探る旅に出る。

UCバークレー大学のマイケル・ポーラン教授の名著
The Omnivore's Dilemma: A Natural History of Four Meals
これを実際に検証するという企画なのだそうだ。
この本は、アメリカの農業と食生活がトウモロコシに過剰に依存し、人工的すぎるトウモロコシ産業がアメリカの環境とアメリカ人の健康を破壊している実態を暴いている。
❶トウモロコシの生産量、作付け面積はアメリカの農産物の中で最大。
❷しかし、そのトウモロコシは品種改良で澱粉以外の栄養も旨みもなく、煮ても焼いても食えない。
❸6割が牛や豚の飼料に回される。
❹コーンで育てると牛は半分のコストと半分の面積、半分の時間でできるが、脂肪分が多い。
トウモロコシはでんぷん質が多くて消化がよく、牛は効率よく吸収できる。そのため、胃袋は胃酸過多になって穴が開き感染症で死亡する牛が増える。その予防のために牛には「抗生物質」などの薬が大量に与えられる。
❺残りは加工されてコーンシロップやコーンスターチ、ビールやバーボンになる。
❻コーンシロップは現在、砂糖よりも多く使用されている。ほぼ全種類のコーンシロップは、遺伝子組み換えトウモロコシを原料にしている。原料自体が別の意味で危険である。
❼コーンシロップは糖尿病などの原因になる。
❽アメリカ人の肥満や成人病は、コーンシロップの生産高と比例している。
❾アメリカ政府はキューバ革命以来、砂糖の代替品の安定した供給を確保するためコーン農家に莫大な助成金を与え続けている。
アメリカで生産されているのは、我々が夏に美味しく食べているスイートコーンではない。デントコーンという、飼料用の品種である。実は世界で最も作付けされているのがこのデント種で、ほぼ食用にはならない。エタノール燃料になるのもこれ。つまり、普通に暮らしているとスイートコーンこそがトウモロコシだと思っている人が多いだろうけど、スイートコーンは世界中で生産されているトウモロコシの数%に過ぎないのだ。
日本人は知らないうちに結果的には大量のコーンを食べている。鶏肉・豚肉・牛肉・卵・牛乳を食べてれば、間接的にコーンを摂取していることになる。つまり、日本での畜産の餌は、半分以上がデントコーンでできているのである。
黒毛和牛の場合、肥育段階で4トン程度の飼料を食べるが、そのうち2トンはデントコーンである。通常、畜産を行う場合は、その国で最も安価に生産できる穀物を与えて育てるものだ。アメリカではコーン、ヨーロッパでは麦など、オーストラリアでは草。しかし日本だけは、終戦後のアメリカの嗜好コントロールによって、米国産コーンをたっぷり食べさせた肉が好きになってしまった。
しかし、エタノール燃料などの関係でコーンが値上がりし、飼料価格は高くなった。いまは落ち着きつつあるとはいえ、世界の穀物在庫量は依然として減少傾向にある。本来的には、日本は米国産コーンに頼るべきではないのである。
でん粉はコーンスターチとなり、化学反応でコーンシロップになる。コーンシロップというと「そんなの、うちでは使ってないよ」と言うかも知れないが、「果糖」といえばどうだろうか?清涼飲料水や加工食品にはコーン由来の果糖が使われていることが多い(正式名称は高果糖コーンシロップ)。映画の後半では、清涼飲料水やジャンクフードの摂りすぎで糖尿病を発症したタクシー運転手との対話が出てくる。
また、世界中の穀倉となっているアメリカのコーン生産は、収穫物を販売した価格だけでは成り立たない産業なのである! 補助金があって初めて成り立つのがアメリカ農業。日本では「農業は補助金漬けだ」とか「保護がなければ成り立たないものは産業ではない」などと言われるけれども、世界的に見れば、食料という戦略的なものに保護・補助を全くつけない国なんてないのだ。
●監督・製作:アーロン・ウルフ 2007年/アメリカ/90分
●出演/共同制作:イアン・チーニー カート・エリス
●キング・コーン~世界を作る魔法の一粒~(予告編)
また、広範囲に活用されていることに驚かされる。
発酵食品としては、バーボンウイスキー、ビールなどの酒類、ミリン、お酢の原料になる。
ポップコーンやコーンフレークなどのスナック菓子の原料でもある。トウモロコシの加工デンプンであるコーンスターチから水アメ、ブドウ糖やオリゴ糖などの糖化製品がつくられ、菓子、清涼飲料水、パン、練り製品、マヨネーズ、サラダドレッシング、ケチャップ、ウナギや焼き鳥のタレをはじめ、健康食品から医薬品などに使われている。とくに、ファーストフードのほとんどに、トウモロコシやその製品が含まれている。
相当に深刻な問題を取り上げているが、全体としてほのぼのとした雰囲気が漂っていて、とても観やすいしわかりやすい構成だった。大学生の二人が、毛髪でDNAの検査をしたところ、身体の大半がコーンに由来する食物から出来ているらしいという結果が出たのに驚き、彼らはコーンを巡る旅を始める。アイオワ州のコーン畑を1エーカー借り受け、地域の人達に教えてもらいながらコーンを生産する。そして、その収穫物がどのように食物に変容しているか、を探る旅に出る。
UCバークレー大学のマイケル・ポーラン教授の名著
The Omnivore's Dilemma: A Natural History of Four Meals
これを実際に検証するという企画なのだそうだ。
この本は、アメリカの農業と食生活がトウモロコシに過剰に依存し、人工的すぎるトウモロコシ産業がアメリカの環境とアメリカ人の健康を破壊している実態を暴いている。
❶トウモロコシの生産量、作付け面積はアメリカの農産物の中で最大。
❷しかし、そのトウモロコシは品種改良で澱粉以外の栄養も旨みもなく、煮ても焼いても食えない。
❸6割が牛や豚の飼料に回される。
❹コーンで育てると牛は半分のコストと半分の面積、半分の時間でできるが、脂肪分が多い。
トウモロコシはでんぷん質が多くて消化がよく、牛は効率よく吸収できる。そのため、胃袋は胃酸過多になって穴が開き感染症で死亡する牛が増える。その予防のために牛には「抗生物質」などの薬が大量に与えられる。
❺残りは加工されてコーンシロップやコーンスターチ、ビールやバーボンになる。
❻コーンシロップは現在、砂糖よりも多く使用されている。ほぼ全種類のコーンシロップは、遺伝子組み換えトウモロコシを原料にしている。原料自体が別の意味で危険である。
❼コーンシロップは糖尿病などの原因になる。
❽アメリカ人の肥満や成人病は、コーンシロップの生産高と比例している。
❾アメリカ政府はキューバ革命以来、砂糖の代替品の安定した供給を確保するためコーン農家に莫大な助成金を与え続けている。
アメリカで生産されているのは、我々が夏に美味しく食べているスイートコーンではない。デントコーンという、飼料用の品種である。実は世界で最も作付けされているのがこのデント種で、ほぼ食用にはならない。エタノール燃料になるのもこれ。つまり、普通に暮らしているとスイートコーンこそがトウモロコシだと思っている人が多いだろうけど、スイートコーンは世界中で生産されているトウモロコシの数%に過ぎないのだ。
日本人は知らないうちに結果的には大量のコーンを食べている。鶏肉・豚肉・牛肉・卵・牛乳を食べてれば、間接的にコーンを摂取していることになる。つまり、日本での畜産の餌は、半分以上がデントコーンでできているのである。
黒毛和牛の場合、肥育段階で4トン程度の飼料を食べるが、そのうち2トンはデントコーンである。通常、畜産を行う場合は、その国で最も安価に生産できる穀物を与えて育てるものだ。アメリカではコーン、ヨーロッパでは麦など、オーストラリアでは草。しかし日本だけは、終戦後のアメリカの嗜好コントロールによって、米国産コーンをたっぷり食べさせた肉が好きになってしまった。
しかし、エタノール燃料などの関係でコーンが値上がりし、飼料価格は高くなった。いまは落ち着きつつあるとはいえ、世界の穀物在庫量は依然として減少傾向にある。本来的には、日本は米国産コーンに頼るべきではないのである。
でん粉はコーンスターチとなり、化学反応でコーンシロップになる。コーンシロップというと「そんなの、うちでは使ってないよ」と言うかも知れないが、「果糖」といえばどうだろうか?清涼飲料水や加工食品にはコーン由来の果糖が使われていることが多い(正式名称は高果糖コーンシロップ)。映画の後半では、清涼飲料水やジャンクフードの摂りすぎで糖尿病を発症したタクシー運転手との対話が出てくる。
また、世界中の穀倉となっているアメリカのコーン生産は、収穫物を販売した価格だけでは成り立たない産業なのである! 補助金があって初めて成り立つのがアメリカ農業。日本では「農業は補助金漬けだ」とか「保護がなければ成り立たないものは産業ではない」などと言われるけれども、世界的に見れば、食料という戦略的なものに保護・補助を全くつけない国なんてないのだ。
●監督・製作:アーロン・ウルフ 2007年/アメリカ/90分
●出演/共同制作:イアン・チーニー カート・エリス
●キング・コーン~世界を作る魔法の一粒~(予告編)
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