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むなしく響くギリシャの債務削減目標

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 2020年までに120%。

 国際通貨基金(IMF)、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)が受け入れ可能としている対国内総生産(GDP)比でのギリシャの債務削減目標だ。

 ギリシャと3機関は2020年の段階で債務がこの水準を超えれば、ギリシャは債務の返済を続けることができないとの見方で一致している。

 しかし、多くのエコノミストは、120%という水準は何か特定の経済原理に基づいたものではないと指摘している。どこからこの数字が出たのかもはっきりしているわけではない。

 確かに、120%という水準は達成可能な目標であり、債務問題を抱える他の欧州諸国に債務圧縮による問題が生じないことを示唆する数字でもある。しかし、過度に楽観的だったことがのちに判明した短期の見通しとは異なり、2020年までの見通しが正確だったとしても、ギリシャがこれほど高い水準でさえ維持できないと理由は十分にある。例えば、緊縮財政措置で成長率が抑えられる可能性があるし、債務削減措置そのものに関わる問題、さらには計画に含まれていないことが問題であるものもある。

 トリニティ・カレッジ(ダブリン)の経済学者Constantin Gurdgiev氏は120%という目標について、「神聖にして犯すことのできない欧州連合(EU)の幻想だ」と述べ、「経済学的な根拠がわからない」と指摘した。

 支援する側も、目標の達成に疑念を抱いていることを明らかにした。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長(ルクセンブルク首相)は今週、ギリシャが目標を達成するにはなすべきことが多いと述べ、17日にも同様の発言を繰り返した。週明け20日には、ユーロ圏の財務相とギリシャの会合で第2次支援が決定される見通し。

 欧州委員会とECBの広報担当者はそれぞれ、コメントを差し控えた。IMFの広報担当者は「われわれがこれまでに何度も発言してきたことに付け加えることはない。(目標は)ギリシャと欧州各国が合意した水準だ」と述べた。

 ギリシャのパパデモス首相は目標を達成して支援を確保しようと、予算の削減を推し進めている。

 関係者全てが救済策に合意すれば、あとは2020年までの見通しを信頼するしかないが、これまでの経験でギリシャの債務は予測が難しいことが分かっている。最新の年間のデータが入手可能な2010年の段階で、ギリシャの債務は対GDP比で145%だった。2009年にIMFが示した見通しは116%だった。IMFは2005年の年間報告で、2010年のギリシャの債務は対GDP比で100%を下回るとしていた。

 米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所(ワシントン)の研究員ジェイコブ・カークガード氏はこれまでの予測について、「予測は将来について数えきれないほどの前提に極端に依存しており、その精度は幻想と呼べる程度のものだ」と述べた。

 IMFの元エコノミストで、ロンドンの投資銀行エキゾティックスでエコノミストを務めるガブリエル・スターン氏は、ギリシャに関するIMFの予測は徐々に現実的になってきていると指摘する。スターン氏はIMFの仕事ぶりを評価しながらも、「どの予測にもトップダウンの要素はある。行き着く必要のある政治的に受け入れ可能な数字にあれば、そこが行先となる」と述べた。

 ギリシャの目標である120%という数字がどのようにはじき出されたかは正確にはわからない。IMFは昨年12月、民間の債権者がギリシャの債務について50%の元本削減を受け入れれば、120%の目標をクリアすることができると報告している。

 IMFはこの報告書の中で、120%は「持続可能と考えられる最大値」と述べた。しかし、その出典は同じ年の早い時期にIMFのスタッフが作成した報告書で、その報告書はこれまでIMFが危機に至る前に債務リスクを見抜くことができたかについて批判的だった。後者の報告書では、先進国の持続可能な債務の最大値は80%から192%と推定されるとしている。

 しかも、徴税の範囲や有効性、金融政策に対する国家の支配力、債務の変化率といった要因次第で、こうした予測は国によって大きく異なる可能性がある。

 これらの要素のどれを見ても、ギリシャの未来は明るいとは言えない。コロンビア大学の経済学者、マイケル・ウッドフォード氏は債務の対GDP比率は「かなり不完全な基準」だと言う。ウッドフォード氏はギリシャの問題は比率で議論できる範囲を超えており、税制の非効率性や政治の意思に対する疑念に目を向ける段階にまで達していると述べた。

 国際決済銀行(BIS)の3人のエコノミストが昨年作成した報告書は、1980年から2010年まで18カ国を研究した結果に基づいて、持続可能な債務の水準は対GDP比で平均約85%とした。

 米国など他の先進国と同様、ギリシャは人口の高齢化によって、財源が確保されていない債務を抱えている。経済学者によると、人口の高齢化が進み、退職者に対する労働者の比率が下がれば、過去の実績に基づく債務の水準は将来の経済状況には当てはまらないかもしれないという。

 カリフォルニア大学バークレー校の経済学者アラン・オーバック氏は「この問題はある意味で、債務を測る正しい基準は何なのかということだ」と述べた。「総額はわからないが、潜在的な債務はどこかにある」とオーバック氏は述べた。

 トリニティ・カレッジのGurdgiev氏はギリシャの実際の債務の最大値は他国より低いかもしれないと言う。ユーロ圏に属している小国として、域内の金融政策をコントロールすることはほとんどできないからだ。しかし、Gurdgiev氏は、目標を84%とするのはギリシャにとって政治的に実行可能ではないと指摘、イタリアやアイルランドなど債務危機の不安が和らいだ欧州の他の国の債務水準も持続不可能な方向に進んでいるとの印象を与えることになると述べた。

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