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【神奈川】

猫虐待被告に詐欺罪を適用 愛護家、警察・検察が連携

 インターネット経由で譲り受けた猫を殺傷したとして、川崎市麻生区の男が動物愛護法違反の罪で起訴された事件。「大事にする」と元の飼い主をだましたとして、詐欺罪でも起訴されている。この種の事件での詐欺罪適用は珍しく、県内では初。「なぜ適用したのか?」を探ってみると、動物愛護家たちと警察・検察の連携が浮かび上がってくる。 (渡部穣)

 起訴されたのは広瀬勝海被告(45)。事件発覚のきっかけは、広瀬被告が昨年十一月、猫を譲渡した元の飼い主の女性(52)に送り付けた一通のメールだった。「いたずらが過ぎるので、生きたまま川に投げた。今ごろもがいて溺死しているでしょう」などの内容だった。

 驚いた女性が翌日、麻生署と同区役所に通報。広瀬被告のアパートに行ったところ、二階に続く階段に血だまりがあり、近くの木の下に猫二匹の死骸があった。ただ二匹とも見覚えがない猫で、区役所は持ち主判明まで冷凍保存する措置を取った。

 この時点では川に投げたとされる猫は死骸がなく、事件の立件は難しかった。しかし、以前、被告と同じ名前の男に猫を虐待されたという被害届が出ていたことを同署員が思い出し、二匹の猫を傷つけた容疑で逮捕するところから捜査が始まった。

 後日、女性を含め、インターネットで連絡を取り合った動物愛護家五人が、広瀬被告宅に近い鶴見川で猫の死骸を発見。さらに冷凍保存された二匹の猫の元飼い主も探し当てた。死骸と容疑が結び付き、次々と再逮捕された。

 事件はここで終結するかに見えた。ところが、動物愛護団体の人たちが中心となり、広瀬被告に厳罰を求める署名を横浜地検川崎支部に提出。署名は全国から三千筆以上に上った。動物愛護法違反だけでは軽すぎると、詐欺罪の適用も申し入れた。

 「詐欺罪適用は無理」と冷ややかだった検察庁も、署名の多さなどで態度を急変。「社会的な反響が大きい」と、詐欺罪での起訴を決めた。

 横浜地裁川崎支部での初公判(十五日)で検察側が開示した広瀬被告の供述内容は、耳を疑いたくなるようなものだった。「最初は風呂の水の中に沈めた猫が苦しむ姿を見て征服欲が満たされ、虐待するようになった」「首を絞め、死にそうになると緩め、苦しむ姿を見てほくそ笑んだ」「危険を察知した猫が威嚇的な態度を取ると、壁などにたたきつけ、頭を足でつぶした」−などなど。

 供述は、逮捕直前ごろは殺すためだけに猫を物色していたことをうかがわせており、検察側は、離婚した広瀬被告のストレス発散のためだったとしている。一方、弁護側は供述の信用性を、一部争う構えだ。

 死骸が見つかるなど立件に至ったのは五匹だが、広瀬被告は「十匹以上の猫をもらった」と供述しており、動物愛護団体は広瀬被告に渡った猫を二十匹以上把握している。

 猫を譲った人に共通なのは「広瀬被告が猫好きに見えた」という点だ。「大切に育てる」という誓約書への署名も、広瀬被告自ら申し出たという話もある。検察が詐欺罪適用に踏み切ったのも、誓約書の存在が大きかった。

 動物愛護家が連携して“捜査”し、警察・検察が動いたことの影響は小さくない。

 愛護家たちはホームページ(HP)を立ち上げ、連携を強めている。HP=http://nijinyanko.homepagelife.jp/またはhttp://www.starry-heavenscats.jp/

 

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