2012年2月19日03時00分
迷わずに歩けるようになったら一人前の大阪人――。七つの駅を取り込み、くもの巣状に広がる大阪・梅田の地下街は、日本最大級と称される半面、複雑怪奇さでも知られる。連日、「遭難者」が続出する巨大空間。どうすれば克服できる?
大阪市営地下鉄梅田駅の改札口。道案内専門の交通局職員「サービスマネージャー」が、通行人にせわしく応対する。駅員に道を尋ねる客が絶えないことから、5年前に配置された。8人が1日平均計400人のガイドを担う。最も多い質問は地下鉄西梅田・東梅田両駅への乗り継ぎ。本来なら両駅とも10分足らずだが、一本道ではなく、見通しも悪いため、多くの「迷子」が生まれている。
なぜ、これほど迷いやすいのか。梅田地下街は、阪急三番街からドージマ地下センターまで南北約1.3キロと、泉の広場からハービスOSAKA方面への東西約1.2キロの地下街に、大阪駅前ビルの地下階などが合わさって形成されている。地下街は通常、地上の道路の真下に写し鏡のように造られるが、道路が碁盤の目状に整備されなかったことに問題がある。
話は、1874(明治7)年の大阪駅開業にさかのぼる。当時未開発だった梅田に、線路が斜めにカーブする形で駅ができ、周辺の道路が大阪駅に向かう形で放射状に整備されたため、南北に走る幹線道路と直角に交差しなかった。さらに、地下1、2階にまたがる四つの大阪駅前ビルが接続し、面だけでなく、立体としても複雑きわまる構造となった。
ホワイティうめだを運営する大阪地下街の谷崎卓史参与は「区画整理のタイミングはいくつかあったが、結果的に市の都市計画が後手に回った」と指摘する。
難解な構造なのに、表示もわかりづらい。出口に二つの名称が併存するのが最たる例。地下鉄梅田駅に近い出口の一つには、地下鉄の「18番出口」の表示の隣に、地下街の「7―30」の文字が並ぶ。市や地下街などでつくる連絡協議会が2005年、それまでバラバラだった標識を統一しようと、出口の表示を改めたが、地下鉄側が「番号を変えたらさらに混乱を招く」と、そのままにしている。
地下では全地球測位システム(GPS)が使えず、携帯ナビも頼れない中、「救世主」として登場したのが、目的地までのルートを無料案内する大阪地下街の「うめちかナビ」。約200カ所に貼られたバーコードを読み取ることで自分の位置情報を把握できる。パソコン版と携帯版があり、月1万5千人が利用している。
「ナビ」が示す堂島から阪急梅田駅までの経路は、阪神百貨店脇から阪急百貨店側へ抜けるコース。ただ、常連客に聞くと、「JRを経由する」「駅前ビルを突っ切る」など、各自の「マイウェイ」がある。混雑する時間帯によっても最短ルートは変わる。土地勘がなければ厳しい空間だが、道案内が好きといわれる浪速っ子。遠慮せずに尋ねてみては。(机美鈴)