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今夏の電力綱渡り、火力に注力 増強急ぐ東北電

 東北電力が電力供給力の増強を急いでいる。東日本大震災で被災した火力発電所の復旧を当初予定より前倒ししたほか、出力を高めるガスタービン新設工事に取り組む。今冬の電力不足は回避できる見込みとなったものの、運転停止が続く原発の再稼働の見通しは立っていない。東京電力など他社からの融通がない想定では、次の需要期の今夏には不足に陥る恐れがあり、綱渡りの状況からの脱却は容易ではない。(小沢邦嘉)

◆再開を前倒し
 東北電の主な発電所の稼働状況は図の通り。津波被害を受けた新仙台火力1号機(仙台市、35万キロワット)は昨年12月に営業運転を再開。仙台火力4号機(宮城県七ケ浜町、44万6000キロワット)は営業運転の再開を当初の3月から今月7日に前倒しした。
 東電と共同出資する福島県内の火力の復旧も急ぎ、昨年夏に1200万キロワット台だった供給力は、自家発電設備を持つ民間企業からの買い取り分なども含め1400万キロワット程度まで上昇した。
 今月中には民間発電事業者の余剰電力を購入できる日本卸電力取引所も活用して最大約1460万キロワットまで高める予定。東北電は「2月の需要想定(1370万キロワット程度)を上回り、今冬の需要には対応できる」と説明する。
 さらに7月までに、秋田(秋田市)、八戸(八戸市)、東新潟(新潟県聖籠町)の3火力に、1基ずつガスタービンを新設し、出力を計約94万キロワット高める。

◆全原発停止も
 それでも夏場の需給は逼迫(ひっぱく)しそうだ。東北電が昨年11月に行った試算によると、猛暑想定のことし8月の需給見通しはグラフの通り。需要が被災企業の復旧で増えるとみられることもあり、現段階では28万キロワットが不足する。
 試算には原発再稼働や電力他社からの融通を織り込んでいない。このため融通が受けられれば不足分は補えるが、決して楽観できる状況とは言えない。
 国内の原発は、4月下旬には商業用54基全てが停止する可能性がある。東電の柏崎刈羽6号機(新潟県)が3月下旬に、北海道電力の泊3号機(北海道)は4月下旬に定期検査に入る。両社の供給余力は今冬より低下するとみられる。
 不測の事態も懸念される。実際、昨年7月の新潟・福島豪雨では新潟・福島両県の水力発電所が停止。ことし1月には北海道と本州をつなぐ電源開発(Jパワー)所有の海底送電ケーブル3本のうち1本が損傷し、北電からの融通電力が低下したままとなっている。
 政府は昨年夏に発動した東電、東北電管内の大口利用者対象の電力使用制限令を今夏は回避する方向だ。
 東北電は「電力需給の厳しい見通しの夏に向け、さらなる供給力の積み増しなど対策を検討したい」としている。

◎昨夏以降の東北電の主な電力供給トラブル

 【2011年】
7月26〜30日 新潟・福島豪雨。福島、新潟両県の計29カ所の水力発電所が運転停止
8月17日 秋田火力2号機(秋田市)がタービン建屋内の配管からの蒸気漏れで運転停止。2日後に運転再開
12月9日 能代火力1号機(能代市)が燃料供給設備の異変で約8時間運転停止
 【2012年】
1月25日 北海道と本州をつなぐ海底送電ケーブル3本のうち1本が、船舶のいかりで損傷。北海道電力からの融通電力が約50万キロワットから約30万キロワットに低下。損傷ケーブルは復旧の見通し立たず
2月9日 新潟火力6号機(新潟市)が燃料供給装置の異変で運転停止。翌日に運転再開


2012年02月20日月曜日


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