関西電力の高浜原発3号機(福井県)が20日、定期検査入りし、同社が保有する原発11基すべてが停止する。これで、国内にある原発54基のうち、稼働中は東京電力柏崎刈羽原発6号機(新潟県)と、北海道電力泊原発3号機(北海道)の2基だけとなる。電力各社は火力発電所のフル稼働などで原発停止と寒波に対応しているが、トラブルによる発電停止などの不安は常につきまとう。
火力頼みの危うさを示すトラブルが今月3日起きた。同日早朝、九州電力の新大分火力発電所(大分市、出力229.5万キロワット)が停止した。原因は、氷点下4度という冷え込みで配管が凍り、燃料供給ができなくなったため。供給力の約16%を失った九電は、午前中だけ中部、北陸、関西、中国、四国の西日本の5電力と、東電の計6社から計240万キロワットの融通を受けて何とか急場をしのいだ。
融通する側の負担も小さくはなかった。各社とも急きょ、火力発電の発電効率を上げるなどして対応したが、電力使用率は関電と中部電で93%、北陸電も91%と午前中としては異例の高さとなった。
火力発電は出力調整が容易で需要の急伸にも柔軟に応じられる特性がある半面、フル稼働には向いておらず、トラブル停止が多い。今年に入ってからでも中国電や関電、北陸電、北海道電でトラブル停止が起きている。幸い需給には大きな影響は生じなかったが、各社とも停止した電力分を肩代わりできる発電設備はない。
今月2日に最大電力を記録した四国電では、「あくまで緊急時の対策」(同社)として、火力発電所の定格出力を上回って発電する過負荷運転を初めて実施し数万キロワットを上乗せするなど、各社とも供給力の確保に努力している。しかし「最終的には各社の供給力不安は、融通で支え合っていくしかない状況」(東電幹部)。トラブルが重なったり、九電の新大分発電所のように大規模な発電所でトラブルが起きた場合などは、供給不安が各社で連鎖する可能性もある。
現在までのところ、全国的に電力供給は予想より安定している。昨年11月段階では、今冬の供給余力を示す予備率は、関西電力では最悪で9.5%のマイナスとされていた。しかし企業や家庭での節電の取り組みなどで、全原発が停止しても電力使用率は91%程度に収まる見通しで、他の電力会社でも今後大幅なマイナスになる可能性は薄い。
だが、東電柏崎刈羽原発6号機が3月、北海道電泊原発3号機が4月下旬までに、それぞれ定期検査入りし、それまでに再稼働する原発がなければ、国内の原発は全基停止する。火力発電への依存度はさらに高まることになり、今夏は供給力の確保とトラブルに対する警戒が昨夏以上に求められることになる。【立山清也】
毎日新聞 2012年2月19日 19時39分(最終更新 2月19日 19時45分)