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きょうのコラム「時鐘」 2012年2月20日
3月でダイヤから消える寝台(しんだい)特急(とっきゅう)「日本海」と夜行(やこう)急行(きゅうこう)「きたぐに」のお別れ列車の指定券が1分足らずで売り切れたという。「閉店セール」は、にぎやかでさみしい
二つの列車にごぶさたして久しい。何度も乗った「きたぐに」は早朝に京都、大阪に着く、列車の座席が寝床(ねどこ)代わり。カネはないがヒマはたっぷりあるころの大事な「連(つ)れ」だった ダイヤ改正のたびに首都圏(しゅとけん)や関西との時間は縮まる。日帰り出張は当たり前。もう「遠路(えんろ)はるばる」とは誰も言わない。遠路と言われて迎えられたころは大概(たいがい)、「お泊(と)まりは、どちら」と聞かれた。用件の後で、「軽くどうです」という誘(さそ)いもあった 今は「お帰りの列車は」と問われ、「近くなったから、また」と別れる。便利になったが、それがいい仕事につながるかというと、自信はない。遠来(えんらい)の人をもてなす「軽く一杯」から始まる付き合いが、仕事にプラスしたことは大いにある のんびり走る夜汽車は、車中から「軽く一杯」が珍しくない。そんな旅の時間が薄(うす)れていく。便利さと引き換(か)えに、なくしたものがあるようで、それがさみしい。 |