立ち読み週刊朝日

"婚カツ詐欺師"木嶋佳苗 公判中に美脚エクササイズをやっていた?


 2009年に首都圏で相次いだ男性の不審死事件。大出嘉之さん(当時41)、寺田隆夫さん(同53)の死亡事件に続き、千葉県野田市の自宅の火災で亡くなった安藤建三さん(同80)の事件の審理が始まった。"婚カツ詐欺師"と言われる木嶋佳苗被告(37)の裁判での様子をコラムニストの北原みのり氏がレポートする。

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 安藤さんの事件に切り替わった次の日の2月7日、佳苗は靴を新調した。

 通常、被告人は走って逃げられないよう、スリッパを履く。佳苗もこれまでは、黒のスリッパを履いていた。ところがこの日、佳苗の足下はスリッパではなく、3センチヒールのミュールだった。黒いメッシュの先から、つま先がのぞいている。

「あんなの初めて見た」

 隣に座ったベテラン記者が驚いていた。

 この手の"伝説"を次々つくる佳苗を、「ふてぶてしい」と言う人は多い。それでも私には、佳苗が他人からの同情を絶対拒否しているように見える。"堂々としている女"を、私たちが見慣れていないだけ、という気もしてくる。たとえ同情をひくほうが有利だと分かっていたとしても、佳苗はやらない。それよりも、髪をきれいに巻くほうに時間をかける。靴を新調してしまう。惨め、哀れ、と思われることは、佳苗にとって耐え難いことなのではないか。だから佳苗の髪は今日もつやつやで、足下は軽やかなミュールだ。使っているシャンプーは何だろう。

 佳苗は机の下でつま先を立て、足を床から数センチ浮かし、足首をひねったりしていた。え? まさか美脚づくり? 佳苗の足首は締まってるなぁ、と思っていたけれど・・・・・・。同情なんてされたくない佳苗。たとえ人生がかかっている裁判であっても、自分を変えることは容易(たやす)くない。佳苗は佳苗らしく、被告人席に座っているだけなのかもしれない。

※週刊朝日 2012年2月24日号