イランの核兵器開発疑惑を巡って対立する同国と欧米の間で、緊張をはらみつつも対話実現に向けた兆しが出てきた。イランが核開発を巡る交渉を約1年ぶりに再開する意思を表明、クリントン米国務長官らがこれに一定の評価を与える発言をしたためだ。ただ、イラン石油省は「英仏に対し原油輸出を停止した」とウェブサイト上で表明。米欧を揺さぶる姿勢も見せている。
クリントン国務長官は17日、イランがアシュトン欧州連合(EU)外交安全保障上級代表に書簡を送り「核交渉再開の用意がある」と表明したことを「重要な一歩で、歓迎する」と述べた。同交渉は米英など国連の安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた6カ国によるイランとの対話の枠組みだが、昨年1月以来中断したままだ。
■「慎重だが楽観視」
同長官と17日に会談したアシュトン代表はイランの動きに対し「慎重だが楽観視している」と期待をにじませた。
イランがアシュトン代表への書簡送付を明らかにした15日、アハマディネジャド・イラン大統領はウラン濃縮のための新型遠心分離機の開発を発表するなど核開発継続の意思を強調。次いでイランの国営メディアが「ギリシャ、イタリア、フランスなど6カ国を対象に原油輸出を停止した」と報じた。イラン石油省筋は報道を否定したが、16日の中東産ドバイ原油価格の急騰は報道が一因との見方がある。
EUへの書簡が柔軟姿勢である一方、核開発や原油禁輸の構えは威嚇だ。「方向性が逆のシグナルを同時に発して相手の様子をうかがう」(近隣国政府関係者)イラン独特の両面外交といえる。
イランは欧米との駆け引きを心理戦と位置付けている。特に欧州債務危機の影響が目立つ国への「原油禁輸」報道は、市場に限定的な影響を与えようと当局者が意図的にメディアに漏らした後に否定する形で情報操作を試みたフシもある。
米国は大統領選前に強まってきた自国経済の回復基調維持が関心事。債務危機による景気悪化を抑えたいEUとともにイラン発の原油高騰は何としても避けたいところだ。
■英仏への原油輸出停止
米欧高官がイラン書簡を評価した背景には、世界経済に悪影響が及ぶリスクを避けるため、エスカレートするイラン情勢にわずかでも「踊り場」を設けた方がいいとの判断があったとみられる。
一方イラン石油省のニクザド報道官は19日、同省のウェブサイト上で「輸出を停止した英仏企業への原油を新たな顧客に売却するだろう」と発表。英国は昨年秋にイラン産原油の輸入を停止したが、フランスはイラン産が輸入原油の6%(昨年7~9月時点)を占める。
イランとしては、EUが原油の輸入停止を始める7月1日より前にEU加盟国への輸出を段階的に停止。経済面で揺さぶりつつ自国のペースで交渉を進めたい意向とみられる。(ドバイ=中西俊裕)
クリントン、アハマディネジャド、EU、イラン
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