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  遥かなる平凡の日々へ 作者:水城 光
第一章 狂いだした歯車
最悪な一日 Ⅱ
「むー…」

急いで体育に向かったもののやはり説教をくらわされ、しまいにはコーンの後片付けまでさせられてしまった。こうなるのならサボればよかったといまさら後悔したが、もう遅い。



「あーめんどくさいな~…ん?」



体育館へ向かおうとしていたのだが、なにやら話し声が聞こえる。話し声の聞こえるところに近寄ってみると、女子生徒が一人とその近くにいたのが一つ上の先輩である一条 煉先輩だったのだ。

 人の名前を覚えるのが苦手な私がなぜ知っているのかというと、その美しい美貌で数々の女性をとりこにしてきたが、いったん自分の機嫌を損ねたものには一切かかわりを持とうとしない。なんとも俺様気質なのである。最近は、フリーだとか何とかいっていたような気もするが、私には関係のないことなので気にしないでおこう。

 そんな男の何処を好きになるのか理解しがたいが、クラスの数人はこの男の事が好きだ。なので、必然的に覚えてしまった。



「あ、あの!好きですっ」



なんて考えている間にもう告白は始まってしまった。だいたい、何でこんな所で告白などしているんだ。ありがちではあるが、此処は喧嘩などに使うことが最適であろう。ここから逃げることもできるのだが、誤って気が付かれてしまったら元も子もない。ひと段落するまでここで待っていることにした。



「だから?」

「え?」

「だから俺にどうしろっていうんだ?」



何処までも上から目線なこの男の何処がいいのやら。本当に理解しがたい。



「で、ですから…付き合っていただきたいと」

「なら、今此処で俺のいいところを十個言ってみろよ?」

「え!?」



 突然何を言い出すのだこの男は。女子生徒は混乱してまだ一つもいえていない。私だったら十個ぐらい余裕でいえると思う。

 もちろん、嫌なところだが



「あ、あの…ええと……」

「もういい。二度と俺の前に現れるな」



 一条 煉はそう言うと、追い払うかのように手をひらひらさせた。女子生徒はその言葉と言動に怒り出した。



「最低!」

「最低?俺の何処が最低なんだ?君のくだらない事に時間を使ってやってるんだぞ?」


 一条 煉はそういいながら女子生徒をにらんだ。女子生徒は怖くなったのかその場から逃げ出した。 
一条 煉は、女子生徒の姿が見えなくなると同時に此方を向いた。



「所でおまえはいつまでそんなところに隠れているんだ?」



 あはははは、ばれてるしー。悠葵はおずおずともの陰から出てきた。



「…お前の名前は?」

「……浅井です」



 学校で目立つ人に名前を聞かれて、喜ぶ女子は多いだろう。あいにく、私にはこの上ない迷惑にあたるものである。なので、偽名でも使っておいた。

 まぁ、どうせすぐに忘れるだろう。



「下の名前」

「…悠子です」

「ふっ。平凡名前だな」



平凡で何が悪い、平凡はいいものなんだぞ。まぁ、あんたみたいな人に分かってもらうつもりはないけど。私は黙っていた。



「君は、彼女のことをどう思う?」

「…………?」



彼女?ああ、さっき怒りながらどっかいった人のことか。あの人、顔はまぁ可愛いほうだったから、どうせ、絶対okもらえるとでも考えていたのだろう。

 それか、ただ単に目の前にいる男の容姿とかが気に入っただけだろう。でなければ好きな人のいいところを一つも浮かばないなんてことはありえないはずだ。




「さぁ?特に何も。ただ単に外見を見て好きか嫌いか判断しただけでしょうね」



まー。私にゃ、こんな男の何処が良いのかさっぱり分かりませんが?



「俺にはそんな理由で告白してくる彼女の意思がわからないな」



あんたみたいな人に分かってもらわなくても良いと思います。



「まぁ、一時期の恋なんてそんなものですよ」

「…君は、恋愛感情を持った男性はいるのか?」

「いませんけど?だいたい、恋愛感情なんて期間限定の魔法に掛かったとでも思えばいいんですよ」

「…………」


しまった、めっちゃ変な発言した。恋愛小説を書いていると思うのだが、なんでこんな簡単な事で好きになったり嫌いになったりするのだろう。私の作品にはある程度は恋愛要素は入れているつもりだ。

 しかし、今回の作品のように最初から恋愛でいく話は書いたことがない。自分が恋愛していれば簡単な話なのだが、実際恋愛などしたこともない。てか、しなくても生きていけるのでする気など一切ないのだが



「君も、あの子と同じことを言うのだな…」



そう呟いた先輩の瞳に、一瞬影が見えた気がした。いったい、どうしたのだろう?尋ねてみたい気もしなくはないが、必要以上に相手の中に踏み込まないのが私の作る関係だ。

 そもそも、関係自体つくろうとも思わないけど。

先輩は気を取り直したように話しかけてきた



「道具の片付けかい?」

「はい」



私の持っている三角コーンを見て気が付いたのだろう。先輩は重そうな体育倉庫の扉を開けてくれた。意外といい人なのかもしれないな。私は少しそう思った。

 けれど、そこで気が緩んでいたのかもしれない――…



「知っているかい?此処は中からは絶対に開けられないようになっているんだよ?」

「……そうですか」



 私が倉庫の奥にいる事と、先輩の不適な笑みを見て話しをしたことで一瞬で気が付いた。この先輩が私に何をしようとしているのかを。しかし、私は行動しなかった。別に、閉じ込められても気にはしない。今は三時間目なので、その内誰かが不審に思って探しにくるだろう。そのときまで待っていればいいだけの話だ。



「覗き見をした子にはお仕置きしなきゃ…ね?」

「…………」



 先輩は私が動き出さないことに不審に思ったようだが特に気にしないようにして、体育館倉庫の扉を閉めた。ガチャリ、と鍵の掛かる音が聞こえた。渡りの推測は正解だったようだ。



「はぁ…………」



一体先輩は私に何をしろというのか?だいたい、暗いところは怖いとも思わないし、一人だから寂しくて泣くこともありえない。少し寝ようかとも考えたが、ここは誇りが結構たまっていたのでやめておこう。
 主人公勘よすぎる!!
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