旬のタレントにまつわる空虚感
向井理人気を支えているのはだれだ
現在、向井理が「人気者」「旬」であることはまちがいない。古語でいうところの「ときめく(=時流にのって栄える)」ってやつか。『源氏物語』の冒頭で習った記憶がある。まさに向井理はときめきまくっているわけだ。テレビをつければ1時間に5回くらい彼のCMにぶち当るし。あっという間に男性タレントCM本数1位だってさ。
彼を見かけると、「蛍光灯があたっているみたい」と毎回思う。なんじゃそりゃ。スポットライトとか、オレンジ色の電球色でもなく、真っ白な蛍光灯。影なし、曇なし、ツルっとしているのが魅力でもあり、物足りないところでもある。先週のテーマは「重」だったが、今回は「軽」とでも言いましょうか。
ほかにも旬といわれる、たとえば武井咲やら剛力彩芽なんかとの決定的なちがい。それは、「人気者になった時点がものすごいはっきりしている」ということじゃなかろうか。
武井や剛力は、「気づいたら、人気者としてそこにいた」。最初に見たときからすでに「大人気の武井咲さんです」という前ふりで登場していた。言うなれば転校生みたいなもんだ。氏素性もよくわかんないけど、あらわれたときにはすでに「高嶺の花」的存在であり、黒板の前であいさつした途端、男子釘づけ、女子ざわめく、みたいなさ。その「高嶺の花的要素」をかたちづくるものは、実力だけではなく事務所のチカラとか戦略とか、複雑な仕掛けもあるんだろうが、ディズニーランドの花火打ち上げ場所が一応秘密にされているのと同様、ホントのところなんて一般人にはわからない。
が、向井理の場合、すくなからぬ視聴者は、それ以前の彼、「イマイチ、パッとしない時期」を覚えている。その姿は「いつか芽が出るときを待って虎視眈々」というより「これで安定気流に乗りそうなのんびり」であった。なのにNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の爆発的ヒットにより、人気者となった。熱狂は分不相応でさえあった。それは、クラスのなかで冴えなかったあいつが、運動会の活躍によりいきなりスターになり、人気うなぎのぼり。『タッチ』の、上杉達也(南とくっつく兄貴のほうね)的役周りといえる。
だから、その分、向井理が「地に足がついた人気なのか」といえば、そうもいかないのが難しいところ。麗しの転校生だろうが、いままで冴えなかったタッちゃんだろうが、彼らを人気者にしたのは、「クラスのその他大勢」であり、だれもが自分はコアな当事者ではないと思っている。長渕剛のファン1人分の熱を1000人くらいで分かち合っている。だから、旬であるってことは、じつはとても危ないことでもあるのだ。胴上げってみんなでポンポンあげるから、ひとりくらい抜けても大したことないやと、みんなが思えば、上げられている人は落下して大ケガだしさ。
また、なぜか彼のCMでの役周りが、ことごとく「軽」なのだ。ハウスメイトのCMでは、引っ越した隣の美人に心を動かされると、彼氏が出てきて、トホホとなる役周り。さらに通信教育ユーキャンのCMでは、恩師・武田鉄也に再会。「ふらふらしてたお前がなあ、先生うれしいよ」と言われ、はにかむ役周りだ。いまをときめくタレントよりは、売り出し中の新人一年生が請け負う役どころが多いのに、またそれがよく似合う。29歳なんだけどね。21歳くらいの軽量感。同じユーキャンのCMでペン習字を習ってるわよとほほ笑む柴崎コウからは、ツユほども感じられないフレッシュ感がある。29歳なんだけどね。この路線、ひた走ると、ゴールには筒井道隆が待っていそうな気がする。どうでしょう。
[文:平瀬菜穂子]
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