「ここまで厳しいとは」 検察、特捜批判に言葉失う

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小沢一郎氏の公判の経緯と今後の日程

 有罪を支えるはずの元秘書らの供述調書の大半が証拠として採用されず、検察官役の指定弁護士は苦しい立場に追い込まれた。17日、東京地裁であった民主党元代表・小沢一郎被告(69)の公判。検事の利益誘導や、強圧的な発言を批判した地裁は、東京地検特捜部という「組織」の問題にまで踏み込んだ。

 「ここまで厳しく指摘されるとは……」。検察幹部の一人は、言葉を失った。

 この日の決定は、石川知裕衆院議員(38)や池田光智元秘書(34)を調べた田代政弘検事らの利益誘導を批判。不適切な取り調べは「個人的ではなく、組織的なもの」とまで表現した。

 一昨年秋に発覚した大阪地検特捜部による証拠改ざん事件を受け、改革が進む時期。この幹部は「(身内の検事に)足を引っ張られた」と恨み節を口にした。

 現職検事の調書が多く却下された一方で、証拠改ざん事件で懲戒免職になった前田恒彦元検事の調書が採用されたことに、「笑っちゃうよね」と自嘲気味に語る幹部もいた。

 決定には、「可視化(録音・録画)されていれば、行うことのできない取り調べ方法だ」「メモを廃棄したことで、適正な取り調べの裏付けを自ら失わせた」などと、改革論議を意識した言及も並んだ。

 可視化の法制化については法制審議会で検討が進んでいる。法務省幹部からは「可視化もメモの保存も、すでに前向きに進めている話」と強がる声の一方で、「大阪の事件に加え、新たな問題が出たことは確か。議論の材料にはなる」との見方も聞かれた。

 不起訴にしたはずの小沢氏と、検察との攻防も終わらない。

 土地取引事件で特捜部は小沢氏の立件を目指し、石川議員や池田元秘書から「小沢氏に収支報告書の虚偽記載内容を報告し、了承された」とする供述調書を得たが、起訴を断念した。

 捜査は終わったにもかかわらず、検察審査会の判断で小沢氏が強制起訴され、再び矢面に。「違法・不当な捜査で検察審査会も欺かれた」。昨年10月からの小沢氏の公判で、矛先は検察官役の指定弁護士でなく、検察に向けられてきた。

 小沢氏の強制起訴を決めた検察審査会で法的アドバイスをする審査補助員を務めた吉田繁実弁護士は、小沢氏の関与を示す調書の却下を受け、検察に苦言を呈した。「市民は検察が出してきた資料に基づいて審査するしかない。検事の取り調べまで検証しようがないのだから、適正な捜査をしてもらわないと困る」(小松隆次郎、田村剛)

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