東京電力福島第1原発事故の損害賠償方針を審議している文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長・能見善久学習院大教授)は17日、将来も居住制限を受ける「帰還困難区域」に住居のある人への賠償のうち、将来にわたって生じる慰謝料を一括して支払う方式にすることでほぼ合意した。
同区域は、原発から半径20キロ圏内の警戒区域の解除後に設定され、現時点の年間被ばく線量が50ミリシーベルト以上の地域。5年が経過しても居住可能の目安とされる年間20ミリシーベルトを下回らない恐れがある。
現在東電による賠償は、生活費の増加分を含む慰謝料(月10万円)や仕事ができないことによる減収を月ごとに計算し、3カ月分がまとめて支払われている。だが、この方法では、他地域で生活を再建する場合に必要なまとまったお金が得られにくいという不便さを考慮した。金額は未定だが、少なくとも5年間分の慰謝料が検討されている。
また、現時点の年間被ばく線量が20~50ミリシーベルトですぐの帰還が難しい「居住制限区域」では、一括支払い方式と、現行の月額方式の選択式になる見通し。
一方、被災者が避難先でアルバイトなどをして収入があった場合、東電が賠償額から差し引いていることが問題となっている。
審査会が昨年8月に公表した賠償の中間指針を東電が厳格に適用しているためだが、被災者からは「就労意欲を失う」との批判がある。審査会ではこの問題への対応も話し合われ、一定金額までは差し引かない方針を取ることで合意した。金額については委員から国の定める最低賃金を参考に「月15万円でどうか」との意見が出たが、結論は出ず持ち越しとなった。【野田武】
毎日新聞 2012年2月17日 20時40分(最終更新 2月17日 21時25分)