民主党元代表・小沢一郎被告(69)の初公判が6日、東京地裁で開かれる。「起訴すべきだ」と決めたのは、11人の市民で構成する検察審査会による2度にわたる議決だ。法的な助言をするために同席した吉田繁実弁護士(60)は初公判を前に取材に応じ、「素人の感情的な判断という批判は見当違いだ」と語った。
同席したのは、昨年8〜10月の2回目の審査。強制的に起訴するかを決める2回目は、慎重を期すために「審査補助員」として弁護士が立ち会う仕組みだ。
「法律家としては、どうお考えですか?」「判例はどうなっていますか?」
審査員11人の平均年齢は34.55歳。頻繁に集まって東京地検特捜部の捜査記録を読み、疑問をぶつけ合った。
議論の焦点は、小沢氏の資金管理団体「陸山会」の2004年の土地取引をめぐり、政治資金収支報告書に元秘書と共謀してうその記載をしたかどうか。
質問を受けた吉田弁護士は、上下関係がある場合に共謀を認めた過去の判例を解説した。審査員らは、不起訴にした特捜部の副部長も呼び、判例への見解などを何度も聞いた。
「小沢氏は自分で4億円を用意している」「4億円を隠す偽装工作の疑いがある銀行からの融資書類に、小沢氏が自ら署名している」「4億円の出どころは、小沢氏も元秘書もしっかり説明できていない」……。証拠を検討した結果、こうした意見が相次いだ。
小沢氏と元秘書の主従関係も考慮した。「小沢氏から『コピー用紙には裏紙を使え』と指示された」。元秘書の石川知裕衆院議員(38)の供述調書にあった一文に、注目が集まった。
「1円するかしないかの話まで指示を受けていた石川議員が、4億円もの金を小沢氏に相談せずに動かせるだろうか」。審査員の素朴な疑問だった。
審査会は「小沢氏の関与を示す客観的な証拠は十分」と判断。「秘書に任せ、うその記載という認識はない」との小沢氏の弁解は通らないと結論づけた。
市民に強制起訴の権限を持たせることには批判もある。しかし、吉田弁護士は「審査員はみな、真剣に記録を読んでいて、心配はなかった。共謀の認定は簡単ではないが、根拠なく起訴したわけでないことは、裁判を見てもらえれば分かる」と話した。
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初公判で小沢氏は、用意した書面を読み上げ、全面無罪を主張する方針。来年3月に結審し、4月中には判決が出る予定だ。(久木良太)