私事で恐縮だが、2月16日、都立大塚病院形成外科で佐藤卓士医師の執刀による手術を受けた。左胸部静脈の上部にできた粉瘤(直径3cm3mg)摘出のためだ。齢60歳を過ぎて初めての手術である。2泊3日の入院であったが、入院前日を含め丸3日間、(酒を)飲まず、(タバコを)喫わずで"きれいな体"を維持したのは、これまた生涯初体験。起床朝6時、消灯夜10時、そして朝食午前7時30分、昼食正午、夕食午後6時の規則正しい入院生活なので読書の他、ぼんやりとテレビを見る以外することがなかった。
手術当日の朝早く、みのもんたの「朝ズバ!」(TBS系)を見ていたら、ゲストに元「改革派経済産業官僚」として名高い古賀茂明氏が出演していた。驚いたのは、同氏のコメントである。3月末までに1兆円の公的資金が投入される東京電力の経営権を巡る東電と政府(原子力損害賠償支援機構)との確執について、東電の一時国有化を主張している枝野幸男経済産業相を「東電を悪役にした責任逃れだ」と断罪したのである。
同氏の言い分は、菅直人政権時の官房長官であった枝野氏の東電福島第一原発事故対応が十分でなかったうえ、現在も東電処理、原発再稼働問題などで所管大臣としての職責を果たしていないということであった。
朝のワイドショーの視聴者をミスリードする、余りにも乱暴な言い様である。消費増税政局に揺れる永田町で売り手市場の絶頂期にある橋下徹大阪市長顧問として「維新八策」作りに手を貸した政策通の経産官僚OBの発言とは思えない。退任を余儀なくされた鉢呂吉雄前経産相の後を襲った枝野氏の昨秋以降の東電処理問題についての言動を承知したうえでのこととも思えない暴言である。
この問題については、古賀氏に『朝日新聞』が総力を挙げて掲載した2日連続の社説「東電処理と電力改革」(上下各16日、17日付朝刊)を熟読することを勧めたい。同紙は先ず、「福島第一原発の事故にともなう巨額な費用は、東電に徹底的に負担させる。ほとんどの人は異論あるまい。しかし、とても追いつかないだろう。最後は、電気料金や税金の形で国民が負担せざるをえない。これが東電処理の現実だ。」としたうえで、筆者なりにまとめると、以下のように現状を分析し、提言している。
1.今回の事故の責任は一義的に東電にあるが、国にまったく責任がないと考える人はいない2.救済や賠償など後始末は、最後は国として引き受け、東電処理を電力市場の新しい可能性につなげる3.国民負担を最小限にとどめ、東電のリストラを徹底し、負債にあてる原資を最大限ひねり出す4.国民の税金が投じられる以上、株主も損失を負担するのは当然だ5.従って金融機関も結果責任を取るべきである6.経営陣の交代だけでなく主要部署のリーダーに社内外から改革の意思のある人物を据える7.資産の売却・切り離しを進め、関連会社との不透明な取引を排除、社員の処遇を根本的に見直し、さらに企業年金も破綻企業と同じ扱いにする8.それでも足りない分は料金値上げに頼らざるをえない9.国民負担が避けられないのなら、国が経営権を握るほうがいいのは明らかだ---。
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