1月17日の芥川賞受賞会見で「都知事閣下のためにもらっといてやる」と大胆発言をして話題を呼び、受賞作は今や20万部を超すベストセラー。“時の人”となった田中さんは、贈呈式でもあっと驚くパフォーマンスで会場を沸かせた。
同じく芥川賞を「道化師の蝶」で受賞した円城塔さん(39)に続き、けだるそうな表情で壇上へ。マイクの前に立つと、大きく息を吸ってから口を開いた。
「どうもありがとうございました」
この間、たった2秒! 史上最短スピーチを終えると、少し下がって一礼し降壇。周囲は一瞬、静かになった後、笑いと拍手が巻き起こり、司会者が「ハイッ、万感の思いが込められていたと思います」とフォロー。再び笑いに包まれた。
産経新聞の取材に「(贈呈式の)開始が遅くなったので、早めに終わらせようと思った」と答えた田中さん。ワイン2杯を飲んで臨んだ先の受賞決定会見ではネクタイを緩めていたが、この日は無精ひげこそ生やしていたもののスーツ姿にネクタイをきちっと締め、酒も飲んでいなかった。
宿敵の“都知事閣下”石原慎太郎氏(79)は選考委員を退任。贈呈式には出席せず、ガチンコ対決はなかった。
円城さんはあいさつで「賞を頂いたことで私が賢くなったわけではない。これまで通りやっていくしかないが、何とか攻める方向に向かえたら」と抱負。「蜩ノ記」で直木賞を受賞した葉室麟さん(61)は「みんなの力で本が出来上がる。代表として申し上げます。ありがとう」と謝辞を述べたが、やはり田中さんのスピーチは芥川賞史上、出色だった。
(紙面から)