ステロイド潰瘍(steroid ulcer)という言葉でも知られるように、ステロイドホルモンを使用していると、ある時期から皮膚、腸管、そして骨を含めたあらゆる組織が脆弱になる。内服、外用、吸入いずれでも起こる。そしてストレスなどが加わると、炎症、組織障害、潰瘍形成が引き起こされる。そしてこの潰瘍の治りが悪い。いわゆる傷負け体質となる。このメカニズムはいかなるものであろうか。
マウスにハイドロコルチゾン(hydrocortisone、0.5mg/日)を1週間投与すると激しい免疫抑制(リンパ球の減少)とともに顆粒球増多が出現する4)。これは過剰に投与されたステロイドホルモンが生体に停滞し、酸化コレステロールとなったためである。ステロイドホルモンはコレステロール骨格を持ち、新鮮なうちは強力な抗炎症作用を持つが、酸化が進み本来の酸化コレステロールと変成していく。
酸化コレステロールはそのまわりの組織に対する酸化作用によって交感神経優位の状態をつくり、血流障害と顆粒球増多を招く。ハイドロコルチゾン投与マウスの末梢血から血液を採取した炎症性サイトカインの濃度を比較した(図4)。コントロールマウスとステロイド投与マウスを12時間拘束ストレスにさらしたデータである。
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(図4)ステロイドマウスはストレスが加わると炎症を引き起こす
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