アトピー性皮膚炎のステロイド治療について

ALBERT M.KLIGMAN/ステロイド嗜癖(しへき)
藤澤重樹/プロトピクス軟膏0.1%(タムロリムス水和物軟膏)について
安保 徹/アトピー性皮膚炎患者のためのステロイド離脱(1)
安保 徹/アトピー性皮膚炎患者のためのステロイド離脱(2)
安保 徹/アトピー性皮膚炎患者のためのステロイド離脱(3)
佐藤健二/「成人型アトピー性皮膚炎」の治療上の工夫
安保 徹/再び、胃潰瘍、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチについて(前編)
安保 徹/再び、胃潰瘍、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチについて(後編)
深谷元継/アトピー性皮膚炎の脱ステロイドは「療法」ではなく、副作用報告である
佐藤健二/成人型アトピー性皮膚炎の治療
安保 徹/くらしの手帖「私たちはこの本に反対です」に対する私の主張




アトピー性皮膚炎患者のためのステロイド離脱(2)


●ステロイドホルモンは起炎剤にもなる
ステロイド潰瘍(steroid ulcer)という言葉でも知られるように、ステロイドホルモンを使用していると、ある時期から皮膚、腸管、そして骨を含めたあらゆる組織が脆弱になる。内服、外用、吸入いずれでも起こる。そしてストレスなどが加わると、炎症、組織障害、潰瘍形成が引き起こされる。そしてこの潰瘍の治りが悪い。いわゆる傷負け体質となる。このメカニズムはいかなるものであろうか。  マウスにハイドロコルチゾン(hydrocortisone、0.5mg/日)を1週間投与すると激しい免疫抑制(リンパ球の減少)とともに顆粒球増多が出現する4)。これは過剰に投与されたステロイドホルモンが生体に停滞し、酸化コレステロールとなったためである。ステロイドホルモンはコレステロール骨格を持ち、新鮮なうちは強力な抗炎症作用を持つが、酸化が進み本来の酸化コレステロールと変成していく。  酸化コレステロールはそのまわりの組織に対する酸化作用によって交感神経優位の状態をつくり、血流障害と顆粒球増多を招く。ハイドロコルチゾン投与マウスの末梢血から血液を採取した炎症性サイトカインの濃度を比較した(図4)。コントロールマウスとステロイド投与マウスを12時間拘束ストレスにさらしたデータである。 (図4)ステロイドマウスはストレスが加わると炎症を引き起こす
ストレスは白血球を刺激して、THFα(腫瘍阻止因子)、IFNγ(インターフェロンγ)、IL6(インターロイキン−6)の炎症性サイトカインを放出させるが、ステロイド投与マウスではこの傾向が極めて高い。 このようなステロイド投与マウスではストレスによって容易に胃潰瘍などを形成する。正常のマウスでは24時間拘束ストレスをかけないと胃潰瘍はできない。一方、ステロイドを投与していたマウスは12時間の拘束で激しい胃潰瘍形成が起こってくる。ステロイドの抗炎症作用の陰に、このホルモンはこのように容易に組織がこわれる体質を作る力があることを認識してほしい。


●ステロイド依存になったアトピー性皮膚炎患者は交感神経緊張体質に変わっている
健康人とステロイド依存になったアトピー性皮膚炎で、1日尿中の総カテコールアミン、VMA(バニリルマンデル酸、カテコールアミンの代謝産物)、17-KS、17-OHCSを測定し比較した(図5)。 総カテコールアミンとVMAが患者で増加し交感神経緊張状態にあることがわかる。血流障害や顆粒球増多の炎症に移っているのである。 ステロイドホルモンの代謝産物である17-KSは低下し、17-OHCSにはあまり変化は認められなかった。


(図5)ステロイド依存を引き起こしたアトピー性皮膚炎患者は交感神経緊張状態にある


→アトピー性皮膚炎患者のためのステロイド離脱(3)





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