スーパーカブ 110開発者インタビュー「走行性能は使い勝手を向上させたポイント」

51年目の進化、パイプフレームへの変更。

林 :
スーパーカブ新エンジンの採用で出力特性の
大幅な向上が見込まれたので、
それに見合ったフレームをと、今回は
剛性の確保に有効なパイプフレームの
バックボーンフレームを採用しました。
メインパイプもφ47.6mmの
丸断面から60mm×47.6mmの
角断面に変更したうえで、
プレスモノコック部を鋼板 から
丸パイプとピボットプレートの構成にしたことで、ねじれ剛性で29%、トータルでも19%の剛性アップができました。
なによりも乗り手の操作に対して素直で安心感の持てる様に仕上げられたと思ってます。

スイングアームも大きく進化。

林 :
スイングアーム同様にプレス成型のモナカタイプから角断面パイプへと
変更しフレームの剛性アップとバランスを取っています。
ねじれ剛性は87%、トータルの剛性でも48%の向上が果たせました。

ほとんど変わらない車体サイズでも、余裕のライディングポジション。

林 :
スーパーカブとして守らなくてはならない「足つき性」「積載性」
「取り回し性」を確保するために、排気量はアップしましたが、
車体サイズはスーパーカブ90とほぼ同じの基本サイズをキープしました。
ただ、ライディングポジションについては、現代の日本人の体型の
変化に合わせ、着座位置を25mm後方に移動しました。着座位置に
余裕を持たせたことで、今まで少々窮屈に思っていた方でも、乗車時の
快適性はもちろん、スムーズなハンドル操作やチェンジ操作を実感して
いただけると思います。

ボトムリンク式からテレスコピック式フロントサスペンションへ。

林 :
スーパーカブ動力性能の向上に伴い、路面状況を
つかみやすく、より接地感のある
サスペンションが必要になりました。
そこで、スポーツバイクにもよく
使われるテレスコピック式のフロント
サスペンションの採用に踏み切った
訳です。テレスコピック式は剛性と
ストローク量も確保しやすく、路面からのショック吸収力を増加させ、悪路などでの走破性能も向上できました。
スーパーカブ90と乗り比べても
違和感のない、まさに「バイクを操る感覚」が
味わえるサスペンションに仕上がっていると思います。

使い勝手の良いスーパーカブ、にこだわった装備類の見直し。

林 :
「見やすい」そして「見られやすい」ことが快適で安全な
ライディングにつながります。そこで灯火類を改めて見直しました。
ヘッドライトはデザインも含めてお客様からのご要望も多かった
部分でしたので、大型化したうえでマルチリフレクターを採用し、
視認性・被視認性の向上を図りました。テールランプも大きくして
後方からの被視認性を向上させています。メーターも見やすさを第一に
考え、コントラストのはっきりした色調や大きな文字、シンプルな
目盛りのデザインを施して、燃料計や各種インジケーターも内蔵しました。
スーパーカブスイッチ類については、まず配置を
見直しました。
中でもウインカースイッチの位置を
左側に変更して、プッシュキャンセル式を採用し、メインスイッチには
一体式ハンドルロック機構を採用し、
直結防止回路・盗難防止プロテクタも
装備したことで盗難抑止機能も向上
させました。
他にもチェーンケースを音が響きにくい樹脂パーツにして、騒音に配慮して
います。それに伴い従来のドライブチェーン調整サポート機構(音でチェーンの調整不足を知らせる)も材質、形状を変更して耳障りな音にならないように工夫しました。
今までスーパーカブシリーズをお使いいただいていたお客様にも、
初めてスーパーカブを乗られるお客様にもストレスのない使い勝手を
目指して数々のテストを重ねてきました。

< 03 デザイン  |  05 お客様へのメッセージ >

林 薫

スーパーカブ 110 開発責任者
林 薫(はやし かおる)

1986年入社。
東南アジア地域のカブシリーズの車体設計を長年に渡り担当。今回のスーパーカブ 110の開発責任者。

今田 典博

スーパーカブ 110 研究ブロックまとめ担当
今田 典博(いまだ のりひろ)

1983年入社。
ATVシリーズを担当。以後二輪開発においてはジャイロシリーズの完成車テストを指揮。海外赴任からの帰国後、東南アジア地域のカブシリーズの開発に携わってきた。

大坪 守

スーパーカブ 110 デザイン担当
大坪 守(おおつぼ まもる)

1983年入社
デザイナーとして勤務。
ヨーロッパ赴任を経て帰国後東南アジア地域のカブであるWaveのデザインを担当。その後カブシリーズを中心としたデザインを担当。

スーパーカブ 110 エンジン設計担当
石坂 孝史(いしざか たかし)

1984年入社
CBRシリーズの4気筒エンジンの設計を担当。
その後各国向けにスーパーカブのエンジン設計を担当し、2007年にFI化されたスーパーカブ 50ではエンジン設計を担当。