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税と社会保障:一体改革大綱、閣議決定 低所得者・景気対策…具体化先送り

 政府は17日、消費増税を柱とした「税と社会保障の一体改革」の大綱を閣議決定した。1月上旬にまとめた素案を踏襲し、増税の時期や上げ幅は明記したが、低所得者対策などの議論は未消化で具体化は先送りされた。消費税の逆進性対策や景気対策などがあいまいなままでは、増税に国民理解を得るのが一段と難しくなりそうだ。【小倉祥徳】

 「残念だ。内容は自民、公明が与党時代に言っていたものとそう違わない。議論をしない理由はないと思う」。岡田克也副総理は同日の記者会見で、一体改革の与野党協議が進まない現状を嘆いた。

 一体改革の素案は、消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げるのが柱。そのかわりに、低所得者に増税分の一部を還付する「給付付き税額控除」や、住宅購入者への税負担の軽減措置などを盛り込んだ。政府・与党はこれらの具体化を与野党協議に委ね、野党にも増税の責任を共有させようとしたが、野党は協議入りを拒否。増税時の負担を緩和する措置は具体化されないまま、増税法案の策定作業が進みそうだ。

 このうち給付付き税額控除の実施は、納税者の所得や社会保障給付の情報を一元管理する「共通番号制度」の導入(15年1月以降)が前提で、最初の増税に間に合わない。このため、14年4月をめどに「簡素な給付措置」を行う方針で、民主党内では1万円の支給案が浮上。だが、政府内でさえ「対象範囲を安易に拡大すればバラマキになる」との声もあり、給付額や対象者をどうするかの議論は進んでいない。野党を納得させるのはさらに難しそうだ。

 景気が悪化した場合に増税を停止できる「弾力条項」も盛り込んだが、景気状況の判断時期などは示されないまま。大手企業による値下げ圧力にさらされる下請け事業者が、増税分を価格転嫁できずに自腹を切る事態を防ぐため、適切な価格転嫁を促す対策も求められるが、関係省庁による調整が本格化するのはこれからだ。政府はこれらの扱いを、法案提出後の国会審議に委ねる構えだ。

 大綱では「次の改革」にも言及し、一段の消費増税への布石も打った。「財政健全化には税率16~17%が必要」との見方もあるためだが、足元の増税議論の見通しが立たない中で「次の増税」がクローズアップされれば、最低保障年金のように議論を混乱させかねない。財務省内では「次の増税に注目が集まれば、増税慎重論が根強い与党内がもたない」(幹部)との懸念も広がっている。

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 ◆消費増税をめぐる積み残しの課題

 ◇逆進性対策

 「給付付き税額控除」「簡素な給付措置」の制度設計

 ◇弾力条項

 増税の条件となる「経済状況の好転」をどう判断するか

 ◇価格転嫁

 増税分を製品価格などに適正に上乗せしているか監視、不当転嫁への対応

 ◇住宅対策

 増税の影響が大きい住宅取得時の負担軽減策

 ◇次の改革

 今後5年めどに法制上の措置を講じるとした一体改革に続く改革の検討

毎日新聞 2012年2月18日 東京朝刊

 

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