ここらへんから完全にめだか的に……いやなんでもない。むしろこれは彼――?
フラグは乱立しているように見えて、まだ誰ルートかは決まっていない。
第五話
「いいか武蔵、もう一度説明するぞ」
俺はホワイトボードの前に立ち、ビシッと決めた姿で教鞭を持った。
そして目の前に座る武蔵と我が妹を前にもう一度説明する。
ちなみに、そこには至極簡潔にして未だ消えぬ野望がデカデカと書かれている。しかも、今日の俺のラッキーカラーである黄色で。
すなわち……生徒会長!
俺がもう諦めたって? んなわけあるか。
「はいっ!」
「もう聞き飽きたわよ」
「そこっ! 文句言うな!」
全く武蔵は行儀がいいってのにウチの妹ときたら全く。
俺様のスーパーなアイディアをもう一度聞くがいい。そして慄け。
「川神学園では、お前等も知ってる通り決闘というシステムがある。そして学園長は結構融通が利いて、それが生徒達の自主性によるものならば結構OKを出す。それが何かしら実績を出したものであるならば尚更だ」
そう、これは少し調べればわかる事。
決闘は川神学園特有のユニークなシステムの一つだし、校舎の屋上にヘンテコな物が増えていくのも、体育館がドーム型になったのも、学園長が実績を挙げた生徒の要望を聞いたからだ。
だから俺は考えたのだ。
これら二つを上手く使えば……もちろん上手くいくかどうかは運次第だが……イケル、と。
「まずは実績を上げ、そしてあの会長に決闘を申し込み承諾を得て……学園長に頼み込んで再選挙の機会を得る! すなわち決闘という名の選挙! そして勝利し俺は今度こそ生徒会長となるのだ!」
第五話
ドンッ! と迫力出すような効果音が欲しいくらい素晴らしく、俺は計画を言い切った。
計画とも言えない、まだ準備段階でしかない考えだが、それでも十分に目指す価値はある。
そして妹&武蔵の反応は――
「さすが先輩、プッレーミアムな夢のある話でした」
「でも机上の空論だよね」
「うぐぅ」
なんという的確な指摘をする妹だ。流石だ我が妹よ。
というかむしろ的確すぎて胸が痛いんだけど。
しかし大丈夫だ、問題ない。ちゃんとそういう事だって懸念してあるさ。もちろんあるさ。
だって俺だ。神算鬼謀の俺だ。ととと当然だろ?
「まず実績を挙げるにしてもどうやって挙げるのかって話になるし、その会長さんとやらがそんなアホらしい決闘に承諾するかわかんないでしょ? だいたい、そういう展開になったとしても勝てるとは限らないじゃない。っていうかそこで負けたらもう二度とチャンス無いんじゃない?」
「うぐぐぐぐっ!? なんと的確な……流石は微乳スピード系毒舌妹SEINA!」
「変な称号やめなさいよね!」
何を言うか。微乳なんてのは武蔵と並べば明白だし、スピード系なのは新幹線レースで明らかじゃないか。漫画の中か川神院でしかない事だと思ってたのにビックリだぞコノヤロウ。
そして突っ込みの速さもスピード系じゃないか。武蔵なんていつも通り展開についてこれてないぞ。
武蔵よ、お前には速さが足りないっ!
「しかし妹よ。一応実績の挙げ方についてはいくつか考えているのだよ」
「へ~、じゃあいいんじゃない?」
こ、この野郎。いや野郎じゃなくて女か。
あんまりあっさり引き下がられるとやりにくいジャナイカ。
ほら、武蔵までお前の事を不審に思ってるみたいだぞ?
「せ、静那があっさり引き下がるなんて怪しいわね」
「ねぇ、武蔵ちゃんまで兄貴の影響でおかしくなってるの? いい加減にしなさいよね、もう」
「でも先輩の計画自体はすごくプレミアムだと思うわよ?」
「……うん、そうね。さすが武蔵ちゃん、ゾッコンね」
「え? え?」
なんともよくわからん会話の末に、武蔵が?マークを頭の上にいくつも浮かべている状況が出来上がった。
なんだこれ。マジでなんだこれ。
俺にはさっぱりわからないので、とりあえず他の話題を振ることにした。
「そういや立花くんが言ってたんだけどな」
「あぁ、あの胡散臭い人?」
「胡散臭いっておま……まぁいいか。事実だし。なんか言ってたんだけどな、ほら、もうすぐ川神祭があるだろう?」
「確かにそんな時期だね」
「うー、早く私も運営側になりたいわね」
運営側なんてのは糞メンドクサイ上に疲れるだけだけどな。
まぁ武蔵の考えには口を出さないでおこう。来期の学園祭の頃にはまた次の生徒会長に代替わりしてるだろうし。
あぁ、ちなみに立花くんってのは俺の友人の一人だ。立花道幸とかいう名前で、まぁ胡散臭い奴だ。
どこが胡散臭いって、俺と互角にポーカーやら麻雀できる時点で胡散臭い。こっちのイカサマにイカサマで対抗するなんてのはこいつくらいだ。
ちなみにまだ一年である。
「で、その胡散臭い立花くんから頼みでな」
「何?」
「何です?」
「いや、祭で喫茶店やるから――「却下」まだ言い切ってねえぞおい!」
「だってだいたいわかるじゃない」
なんて酷い妹だ。
兄の頼みくらい喜んで聞いてやろうとは思えんのだろうか。
というかなんか誤解してるんじゃないだろうか。
「技術協力だ技術協力! 別に変な事頼みはしねえよ!」
「ちなみに『何の』喫茶なの?」
「……割烹着メイド」
どっかの腹黒割烹着に影響受けたらしいヨ?
まぁ、水着とかフリフリメイド服とかよりは露出少なくていいって事で可決したらしい。
確かに露出は少ないが、それでいいのかあのクラス。
……いいんだろうな。川神学園だから。
「なんてマニアックな……」
「俺に言うなよ……」
「でも何の技術協力なんですか?」
ちょっとげんなりした俺たち兄妹だが、そこで武蔵が質問してきた。
確かに疑問だろう。
でも実際、当日に売り子とかで手伝うのは駄目でも事前にそういう事仕込むのは問題ないからな。
要するに何の技術協力かって言うと……
「料理だ」
「喫茶店なのに?」
「あぁ、まぁ立花くんの言いたい事もわかるさ。美味い飯があれば茶だって美味くなる。まぁ喫茶店だからこの場合はケーキとかのデザート類が主体だけどな」
「なるほど! 静那の腕前はプレミアムですものね!」
「そういうことだ。俺の人気獲得の為にも頼むぞ妹よ」
妹を貸し出すとか俺マジで神だろー。
しかもクリスマスにン千円とかで売れる巨大ケーキ作る妹貸すとかマジパネェわー。
「却下」
「なにぃ!?」
「別に作るのはいいけど、教えるの苦手だもの。プロが作ってるの見ながらとか、本とか見ながら作ればなんとかなるんじゃない?」
「それでなんとかなるわけないだろ非常識妹。お前だって母さんから教わってたじゃねえか」
「それはそれじゃないの」
チィッ、常識人を語るくせに非常識な事を言うなんて卑劣な。
全国デザート巡り修行に出た母さんがいれば話は早いが、いないんだからお前にしか頼む相手いねえんだよ……なんとかして手伝ってもらいたいものだが。
……よし、武蔵をうまく使おう。
静那は元来世話焼きだからな、俺が勝手なことしたから怒ってるだけだろう。まぁそこを譲歩させる手段さえあればなんとかなるはずだ。
「どうする武蔵、お前も静那に教わりたいだろ?」
「へ?」
「ほら、自分でプレミアムなケーキ作ったりできるんだぜ? 感動的だろ?」
「あ……ああ! 確かに!」
なんか恍惚とした表情で宙を見る武蔵。自分の作ったケーキでも妄想してるんだろうか。まぁこいつがまともな知識を得て作ったケーキがどんなものになるかは俺としても非常に気になるところではある。
それには静那の協力が必要不可欠だが、こいつは武蔵には優しいし……おそらくは……
「というわけで、武蔵と一緒に俺が連れてくる奴に教えてやってくれ」
「……汚いわ、さすが兄貴きたない」
「それほどでもない」
汚いは褒め言葉、ってのがあるだろう。
別に自慢するほどじゃあないが、少なくとも嫌な言葉ではないよ。
少し額に指を当てて溜め息をついていた静那は、ようやっと顔を上げて頷いた。
「わかったわよ。やればいいんでしょ、やれば」
「助かったぜ。まぁそう重くなるなよ、学園内に知り合いが増えるとでも思っとけ。な?」
「ポジティブシンキングで助かるわ……はぁ……」
「ふふ……クリスマスにはプッレーミアムなケーキを用意して……ふふ……」
なんかトリップしている武蔵はそのままに、俺は静那をスケジュールの確認をする事にした。
この時期にも関わらず勉強漬けじゃない妹がいてマジで助かったぜ。
今度金が入ったらなんか奢ってやろう。
「ところで兄貴」
「なんだ?」
「会長に決闘とかなんとかって話はどうなったの?」
……また今度話すさ。
どうせそっちでは力を借りるまでもないんだ。いざって時になったらって事でスルーしておこう。
俺だって祭は好きだからな、しばらくはそっちにでも集中しとくさ。
あくまで、しばらくだ。
「ところで……こいつ、どうする?」
「私にふらないでよ」
「だよな……」
(楽しみだわ……絶対にその技量を手に入れてプッレーミアムなのを作って一緒に食べるわよ……!)
あとがき
百代も認める光龍覚醒。
しかしパワーアップ前に攻撃してはいけないのは特撮だけで、これは特撮ではありません。
ヒュームさんはカイザーフェニックスを締めでやってくれればよかったのに。
立花くん:立花道幸 (元ネタ:立花道雪より)
前に書いた短編『さとみタイタン』から抜擢。出すかもしれないし出さないかもしれない。
里見くんの方も出したいなぁ。
追記:実家にしばらく帰る事になったから、予約投稿してる分が切れたら更新が停止するかもしれない。とりあえず3月には戻る、はず。
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